この記事は、マネーフォワード クラウド会社設立を使って株式会社の設立を自分で進め、法務局への登記まで終えた人に向けて書いています。会社設立の書類作成の大部分は、このツールでかなりの範囲を進められますが、登記が終わった後に始まる決算・確定申告・税務上の判断は、ツールの外側で本人が引き受ける工程です。税理士法が定める「税理士でなければできないこと」の範囲、法人税の確定申告書を自分で作成・提出すること自体は違反にならないという事実、そして誤りがあった場合の金銭的なリスクを、国税庁・デジタル庁(e-Gov法令検索)の一次情報にもとづいて整理し、税理士への依頼をいつ検討すればよいかの判断材料を示します。
マネーフォワードで会社設立の書類作成が終わったあと、何が残るのか
マネーフォワード クラウド会社設立を使って会社設立の手続きを進め、法務局への登記まで終えた人は少なくありません。「会社情報入力」画面で会社名・本店所在地・代表者・事業目的・資本金額・決算時期を入力し、「定款の作成方法の選択」画面で電子定款か紙の定款かを選び、「出資金の入金」画面で資本金の払込みを済ませる、という一連の流れを自分で進められるのが、このツールの中心的な役割です。
ただし、登記が完了した時点で会社設立の作業がすべて終わるわけではありません。その先には、決算・確定申告という、税務上の判断が必要な工程が続きます。「設立後の手続き」画面(Step3)が用意するのは、税務署・年金事務所へ提出する届出書類のひな形までで、決算後の法人税申告書の作成という工程は、この画面の対象には含まれていません。届出書類のひな形作成という工程と、決算・申告という工程のあいだには、書類の性質そのものの違いがあります。
この記事では、税理士でなければできないことの範囲、法人税の申告を自分で行うこと自体は違反にならないという事実、そして誤りがあった場合の金銭的なリスクを、条文にもとづいて確認します。まずは、税理士法が定める制限の範囲から見ていきます。

税理士法が定める「税理士でなければできないこと」の範囲|第2条・第52条
税理士法第2条は、税理士が「他人の求めに応じ、租税に関し」行う事務として、税務代理・税務書類の作成・税務相談の3つを税理士業務と定めています。税理士法第52条は、税理士または税理士法人でない者が税理士業務を行うことを禁じ、違反した場合は2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になり得ます(税理士法第59条第1項第4号)。ここで押さえておきたいのは、条文が制限しているのは他人からの依頼に応じて、業として行う場合に限られる、という条件です。
マネーフォワードを使って会社設立を進めてきた代表者が、自分の会社自身の確定申告書を作成・提出する行為は、この「他人の求めに応じ」という要件に当てはまりません。国税庁の「税理士制度のQ&A」問6-1も、非税理士に禁止される税理士業務の内容を条文の引用付きで解説しており、禁止の対象が「他人の」税務書類の作成に限られることを示しています。
つまり、税理士法は自分の会社の申告を自分でやること自体を禁じてはいません。会社設立の登記書類を自分の手で作成できたのと同じように、申告書の作成自体も、法律上は本人が行ってよい作業です。マネーフォワード クラウド会社設立が提供するのは、あくまで会社設立に必要な書類作成を支援する機能であり、税理士業務そのものを代行する製品ではありません。次のセクションでは、この点を国税庁の別のページでさらに確認します。


「法人税の確定申告を自分で行う」ことは違反にならない、という事実の正確な意味
国税庁の確定申告書等作成コーナーのよくある質問には「税理士等でない方が他人の確定申告書等を作成することは法律で禁止されています」という項目があり、法律で禁止されているのが「他人の」確定申告書等の作成である旨が明記されています。裏を返せば、自分の会社の法人税申告書を代表者が作成し、自分の会社の分として税務署へ提出すること自体は、この禁止の対象に含まれません。会社設立の登記書類を法務局へ自分で提出できたのと同じ理屈で、税務署への申告書提出も、自社の分である限り本人の手続きとして認められています。
ただし、無償であれば税理士法に違反しないという理解は誤りです。税理士法基本通達2-1は、税理士法第2条にいう「業とする」について、事務を反復継続して行い、または反復継続して行う意思をもって行うことをいい、必ずしも有償であることを要しない、と定めています。無償でも、他人の求めに応じて反復継続的に確定申告書等を作成すれば、税理士法第52条の制限に触れ得ます。
会社設立を進めた代表者が押さえておくべき線引きは、自分の会社の申告を行うのは問題がないという点と、他人の会社の申告を代わりに引き受けるのは無償でも別の話だという点の2つです。次は、実際に申告書を作る場合に必要になる作業と期限を確認します。

確定申告書等作成コーナー よくある質問(他人の確定申告書等の作成は法律で禁止)(国税庁(確定申告書等作成コーナー))を参照。
法人税の申告書を自分で作る場合に必要になる作業と期限|法人税法第74条第1項
法人税法第74条第1項は、法人税の確定申告書について、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、税務署長へ提出しなければならないと定めています。マネーフォワードで会社設立の手続きを進めた代表者であれば、決算時期をどう決めるかによって、この2か月の起点となる事業年度終了日が変わります。
申告書を自分で作る場合、日々の記帳、減価償却費の計算や棚卸資産の評価といった決算整理、法人税申告書別表の作成という一連の作業を、この2か月の期限内に終える必要があります。マネーフォワード クラウド会計のような会計ソフトは記帳・決算整理の作業を助けてくれますが、法人税申告書別表の作成・提出という工程自体は、マネーフォワード クラウド会社設立の「設立後の手続き」画面の対象には含まれていません。決算月の決め方によって、この期限までに使える準備期間の長さも変わってきます。設立第1期は、開業してからの取引数がまだ少ない会社が多いとはいえ、初めての決算整理と申告書作成を同時にこなす負担は、慣れた第2期以降より大きくなりやすい点にも留意してください。
定款の定め等による申告期限の延長の特例(法人税法第75条の2)を使えば、確定申告書の提出期限を1か月延長できますが、延長されるのは提出期限であり、法人税を納付する期限は当初の2か月以内のまま変わりません。次は、この期限に間に合わなかった場合や、内容に誤りがあった場合の金銭的なリスクを見ていきます。


確定申告書の提出期限(国税庁)を参照。
誤りがあった場合の金銭的リスク|過少申告加算税・無申告加算税
国税通則法第65条は、期限内に提出した申告書について、後から修正申告や税務署長による更正があった場合、納付すべき税額の10%を過少申告加算税として課すと定めています。ただし、税務調査を受ける前に自主的に修正申告をした場合は、この割合が5%に軽減されます。さらに、その税額が期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分については、5%が上乗せされます。
国税通則法第66条は、法定申告期限までに申告書を提出しなかった場合の無申告加算税を定めており、原則の割合は納付すべき税額の15%です。税務調査を受ける前に期限後申告をした場合は10%に軽減され、50万円を超える部分は5%、300万円を超える部分は30%が加算されます(自主的な期限後申告等の場合はそれぞれ5%を減じた割合)。期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合は、この加算税は課されません。
申告書を自分で作成・提出すること自体は税理士法上問題がなくても、内容に誤りがあれば、この2つの加算税というかたちで税負担が増える可能性があります。たとえば納付すべき税額が100万円の場合、自主的な修正申告であれば過少申告加算税は5万円ですが、税務調査を受けたあとの修正申告では10万円になり、金額の差は申告時点の対応次第で変わります。税理士に依頼したからといってこのリスクが制度上ゼロになるわけではありませんが、次のセクションでは、マネーフォワードの画面がこの申告作業のどこまでを支援し、どこから先が本人または税理士の判断になるのかを整理します。


マネーフォワードの「設立後の手続き」画面がカバーする範囲、しない範囲
マネーフォワード クラウド会社設立の「設立後の手続き」画面(Step3)は、入力済みの会社情報をもとに、法人設立届出書・青色申告の承認申請書・給与支払事務所等の開設届出書など、税務署や年金事務所へ提出する書類のひな形を自動で作成します。会社設立の直後に必要な届出という工程は、この画面がかなりの範囲を進められるように設計されています。
ただし、この画面が作成するのは設立関連の届出書のひな形までで、決算後に提出する法人税申告書そのものは対象に含まれません。日々の記帳や決算整理を助けるマネーフォワード クラウド会計と、設立時の届出書類を作るマネーフォワード クラウド会社設立は、別の製品として提供されています。「会社情報入力」画面や「定款の受け取り」画面でひととおりの設立作業を終えた人でも、この違いを知らないまま決算期を迎えるケースが見られます。設立時に使った画面と、決算後に必要になる画面は別物であるという前提を、登記の直後の段階で理解しておくと、決算期が近づいたときに慌てにくくなります。
会社設立をマネーフォワードで進めてきた人であっても、決算・申告という工程に入ると、記帳ソフトの操作と税務判断の両方が必要になり、ここから先を自分で続けるか、税理士に依頼するかという選択が出てきます。次のセクションでは、この選択を検討する際に一般的に挙げられる視点を整理します。

確定申告書の提出期限(国税庁)を参照。
税理士へ相談を検討する場面|一般的に挙げられる3つの視点
ここまで見てきたとおり、法律上は、会社設立をマネーフォワードで進めた代表者が、自分の会社の法人税申告書を作成・提出すること自体に制限はありません。そのうえで、税理士への依頼を検討する場面として実務上一般的に挙げられる視点は、大きく3つあります。1つ目は、設立第1期は簿記・決算の実務経験がない状態で決算・申告作業に向き合うことになりやすい点です。
2つ目は、自分で対応する場合、日々の記帳から申告書作成までに一定の時間がかかる点です。3つ目は、申告内容に誤りがあれば、先に見た過少申告加算税・無申告加算税の対象になり得る点です。これらはいずれも法令や国税庁の公式見解として一律に定められた基準ではなく、実務上一般的に挙げられる考慮点であり、税理士に依頼すれば必ずこれらの負担がゼロになるという意味でもありません。
会社の事業規模・取引の複雑さ・代表者自身の会計知識によって、どこまで自分で対応できるかは会社ごとに異なります。会社設立の直後で本業に時間を割きたい時期であればあるほど、記帳・決算整理にかかる時間を確保できるかどうかも、判断材料の1つになります。断定的な答えを出す性質の問題ではなく、次のまとめで、ここまでの整理を判断材料としてどう使うかを確認します。


まとめ|設立書類の作成はツールで、税務の判断は自分か税理士かを選ぶ領域
会社設立の書類作成は、マネーフォワード クラウド会社設立を使えばかなりの範囲を自分で進められる領域です。一方、登記が終わったあとの決算・確定申告は、税理士法上は違反にならない領域でありながら、実務としては記帳・決算整理・申告書作成という作業量と、誤りがあった場合の加算税リスクを本人が引き受ける領域でもあります。
税理士でなければできないのは、他人からの依頼に応じ、業として行う税務代理・税務書類の作成・税務相談(税理士法第2条・第52条)であり、自分の会社の申告を自分で行うこと自体は禁じられていません。この事実と、実務上の負担・リスクをどう引き受けるかは別の話であり、設立第1期の実務経験のなさ・時間コスト・誤りのリスクという3つの視点を踏まえて、続けるか、税理士に依頼するかを判断することになります。
まずは自分の会社の決算月と、確定申告書の提出期限(事業年度終了日の翌日から2か月以内、法人税法第74条第1項)がいつになるかをカレンダーに書き込み、そこから逆算して、記帳・決算整理をいつまでに終えられそうかを見積もるところから始めてください。

確定申告書の提出期限(国税庁)を参照。



