この記事は、マネーフォワード クラウド会社設立を使って株式会社の会社設立を自分で進め、「会社情報入力」画面の決算時期の欄で手が止まった人に向けて書いています。決算月は登記そのものには関係しない項目ですが、いったん定款に定めると、その後の申告や税務の扱いに長く影響します。会社設立の作業をマネーフォワードで進める人ほど、この一項目を後回しにしがちです。ここでは法人税法や関連する条文を確認しながら決算月をどう選べばよいか、第1期の決算期間がどのように決まるのかを整理します。
決算月に法律上の指定はない|事業年度をめぐる法人税法の考え方
マネーフォワード クラウド会社設立の「会社情報入力」画面では、会社名・本店所在地・代表者・事業目的・資本金額とあわせて決算時期を入力します。この欄を見て「決算月は3月にしなければならない」と思い込む人が少なくありませんが、法令上そのような指定はありません。法人税法第13条は、事業年度について法令又は法人の定款等に定める期間をいい、その期間が12か月を上回る場合は開始日以後1年ごとに区分すると定めているだけで、特定の月を指定してはいません(デジタル庁 e-Gov法令検索、2026年8月21日確認)。
会社法自体にも事業年度の長さそのものを直接制限する条文はなく、実務上は定款で1年の範囲内であれば会社の事業内容に合わせて任意の月を決算月に定められます。日本では国の会計年度(4月〜3月)や大企業の慣行に合わせて3月決算を選ぶ会社が多いだけで、これは法律上の義務ではありません。マネーフォワードの入力画面でも、決算時期は選択式のプルダウンになっており、1月から12月までどの月でも選べます。
自分の判断で決算月というこの項目を決める場合、登記事項ではないため、法務局への提出書類には直接記載されません。ただし定款には記載する事項であり、いったん定めた月はこのあと説明する第1期の期間の長さに直結します。設立準備を進める際は、まず自分の事業の繁忙期や資金繰りを踏まえて、候補となる月を絞り込むところから始めます。

設立第1期は「登記の日から決算日まで」という変則的な期間になる
会社設立を自分で進めるうえで見落としやすいのが、設立第1期の決算期間の特殊性です。通常、事業年度は1年間で区切られますが、この第1期だけは「登記が完了した設立の日から、定款で定めた決算日まで」という、1年に満たない変則的な期間になります。たとえば決算月を3月に定めた会社が6月1日に登記を完了した場合、第1期は6月1日から翌年3月31日までの10か月間になります。逆に4月1日に登記を完了した会社であれば、第1期はほぼ丸々12か月に近い期間になります。
マネーフォワードのこの入力画面で決算時期を選ぶ時点では、登記完了日(設立日)はまだ確定していません。そのため決算月を先に決めてから登記完了のタイミングが後から重なる形になり、結果として第1期の月数は会社ごとにばらつきます。同条の定めにより、事業年度は1年を超えない範囲でしか設定できないため、第1期がどれだけ長くなっても、12か月を上回ることは決してありません。
第1期の月数が短くても、その期間分の決算・申告は通常どおり必要です。会社設立を終えたばかりの代表者にとって、この第1期の長さをあらかじめ把握しておくことは、決算業務の準備期間を逆算するうえでも欠かせません。続いて、この第1期を含めた決算のあと、いつまでに何を提出すればよいのかを見ていきます。


法人税申告の期限は決算日を起点に確定する
決算月が確定すると、法人税の確定申告書の提出期限も自動的に決まります。法人税法第74条第1項は、内国法人は各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、確定した決算に基づき所得金額・法人税額等を記載した申告書を税務署長に提出しなければならないと定めています(デジタル庁 e-Gov法令検索、2026年8月21日確認)。3月決算の会社であれば5月末、9月決算であれば11月末が原則の期限です。
この期限には延長の特例もありますが、自動で適用されるわけではありません。法人税法第75条の2は、定款等の定めにより定時株主総会が2か月以内に招集されない常況にある場合、税務署長への事前申請を条件に、原則1か月間の延長を認めています。会計監査人を置く会社であれば、条件により最大4か月の範囲で税務署長が指定する月数まで延長できますが、会計監査人の設置は主に会社法上の大会社(資本金5億円以上又は負債200億円以上等)が対象であり、設立直後の小規模な株式会社には通常あてはまりません(国税庁 C1-17「定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請」、2026年8月21日確認)。
マネーフォワード クラウド会社設立を使って会社設立を終えた会社の多くは定時株主総会の招集時期を延長する定款の定めを置いていないため、原則どおり事業年度終了の日の翌日から2か月以内に申告する前提で準備を進めることになります。この2か月の間に、決算書の作成・法人税の計算・納税資金の確保までを終える必要があり、期限から逆算した準備が欠かせません。


決算月選びの一般的な考え方|繁忙期・契約更新・資金計画
会社設立の決算月をいつにするかについて、マネーフォワードの画面自体は何も指定してきません。法令や国税庁も特定の考え方を推奨しているわけではなく、ここで挙げる3点は決算月を検討する際に実務上一般的に挙げられる視点であり、断定的な推奨ではなく判断材料の一つとして紹介します。1つ目は、繁忙期と決算・申告作業が重ならないようにする視点です。決算月の翌々月末までに申告と納税を終える必要があるため、決算月をずらすだけでこの負荷が事業の繁忙期と重なるかどうかが変わります。
2つ目は、税理士など専門家との契約更新やヒアリングの時期と重ならないようにする視点です。決算業務を税理士に依頼する場合、決算月の前後は依頼先も繁忙期にあたりやすく、相談のタイミングが取りづらくなることがあります。3つ目は、法人税など複数税目の納税タイミング(決算月からおよそ2か月後)が、会社の資金繰り上厳しい時期に来ないようにする視点です。売上が季節変動する事業であれば、資金が薄くなる時期の直後に納税期限が来ないよう決算月をずらす、という考え方が実務では取られます。
これら3つの視点はいずれも会社ごとの事情によって最適解が異なり、一次情報での裏付けが取れる性質のものではありません。自分で会社設立を進める代表者は、事業の繁忙期・専門家との付き合い方・資金繰りの見通しを踏まえて、複数の候補月を比較したうえで最終的に決算月を選ぶことになります。ここから先は、この決算月選びが免税事業者の判定にどう関わるかを見ていきます。


決算月と消費税免税の関係|基準期間なしの期間をどう使うか
決算月をどう選ぶかは、消費税の免税事業者でいられる期間の長さにも関わってきます。消費税法第2条第1項第14号は、法人の「基準期間」を原則その事業年度の前々事業年度と定めています(デジタル庁 e-Gov法令検索、消費税法第2条第1項第14号、2026年8月21日確認)。会社設立をしたばかりの法人には前々事業年度が存在しないため、原則として第1期・第2期には基準期間がありません。基準期間が無いことは、条件により消費税が免除されるかどうかの判定材料の一つです。
ただし、決算月の工夫だけで免税でいられる年数の上限そのものを何年でも延ばせるわけではありません。実際に消費税が免除されるかどうかは、資本金の額が1,000万円に満たないこと、かつ特定期間(原則、第1期開始日以後6か月間)の課税売上高又は給与等支払額が1,000万円を超えないことなど、別の要件を満たす必要があります。資本金額の条件は決算月とは関係なく、資本金の設定そのものにかかる要件です。インボイス登録をした場合は、この資本金要件をクリアしていても課税事業者になる点も条文上あわせて明記されています。
決算月の選択が実際に影響するのは、この基準期間の無い設立1期・2期を、最長で合計およそ24か月分、実際にどれだけ長く確保できるかという点にとどまります。登記完了日から決算月までの期間を長く取れる決算月を選べば、その分だけ第1期が長くなり、基準期間の無い期間を長く使える計算になります。逆に登記完了日の直後に決算日が来る決算月を選ぶと、第1期が短くなり、第2期の決算日を早く迎えることになります。免税の可否そのものは、資本金額や特定期間の要件とあわせて判定するものであり、決算月の工夫だけで完結するわけではありません。

決算月の入力欄と、決算業務そのものの範囲の違い
マネーフォワード クラウド会社設立の「会社情報入力」画面にある決算時期の欄は、あくまで定款に記載する決算月を確定させるための入力項目です。この欄に月を入力しても、実際の決算書の作成や、法人税・地方税など各種申告書の作成までを自動でこなしてくれるわけではありません。会社設立の書類作成という工程と、設立後に毎年訪れる決算業務は、別の工程として切り分けて考えるべき点です。
登記が完了すると、画面はStep3の「設立後の手続き」に進み、年金事務所・税務署への届出書類のひな形が自動作成されますが、この段階でも決算そのものの作業は始まりません。決算業務が実際に発生するのは、ここで選んだ決算月の到来後です。マネーフォワード クラウドの会計ソフトを使えば、日々の記帳から決算書の作成まで一定の範囲を自分で進められますが、各種税務申告書の作成や、税務署への提出判断は、会計知識を要する領域として残ります。
会社設立をマネーフォワードでどれだけ自分で進めても、決算月をいつにするかという入力自体は数秒で終わる一方、その先の決算・申告業務は毎年継続して発生する作業です。初めての決算に不安がある場合は、税理士に決算だけを依頼する、あるいは記帳から申告までを継続的に依頼するといった選択肢もあります。次のセクションでは、決算月を決める際によくある誤解を整理します。

決算月に関するよくある誤解と、正しい理解
決算月というこの項目を決める段階で、根拠のない思い込みのまま定款に記載してしまう人がいます。1つ目は決算月を国の会計年度に合わせて3月にしなければならないという思い込みです。この条文には特定の月を指定する規定はなく、1年の範囲内であれば会社の事情に応じて自由に選べます。会社設立を自分の手で進める代表者ほど、ここで最初の候補を絞りすぎてしまう傾向があります。
2つ目は決算月の選び方次第で消費税の免税事業者でいられる期間を何年でも延ばせるという思い込みです。決算月の選択が影響するのは、基準期間の無い設立1期・2期をどれだけ長い月数分使えるかという範囲にとどまり、資本金1,000万円に満たないことや特定期間の課税売上高・給与等支払額の要件を満たさなければ、そもそも消費税は免除されません。3つ目は、確定申告書の提出期限は申請すれば誰でも自動的に延長されるという思い込みです。延長は自動適用ではなく、納税地の所轄税務署長への事前申請が必要な特例であり、定款等の定めにより定時株主総会が期限内に招集されない常況にあることなど一定の要件も満たす必要があります。設立直後の小規模な株式会社では、この要件を満たさず対象外となることが多く、原則2か月の期限内に申告する前提で準備する会社が大半です。


まとめ:会社設立の決算月は、登記より先に自分で仮決めしておく
ここまで見てきたとおり、決算月は法令上どの月を選んでも構わない項目でありながら、いったん定めると第1期の期間の長さ、法人税の申告期限、免税判定にどれだけ有利な期間を確保できるかまで、長期にわたって影響します。マネーフォワード クラウド会社設立の入力画面で数字を選ぶ前に、繁忙期・専門家との付き合い方・資金繰りといった一般的な視点を踏まえて候補を絞り込み、登記完了予定日とのバランスで第1期の月数を仮に計算しておくと、あとで慌てずに済みます。
資本金の額をいくらにするかという、マネーフォワードの入力欄で行う判断とあわせて、いつを決算月にするかも会社設立の初期段階で固めておくべき項目の一つです。この申告期限は決算月が決まれば自動的に確定するため、まずは自分の事業年度のカレンダーを描き、第1期がいつからいつまでになるのかを紙に書き出すところから始めてください。判断に迷う場合は決算月の候補を2〜3つに絞ったうえで税理士に相談する進め方も、自分で手続きを進める人にとって現実的な選択肢です。マネーフォワードで会社設立を進めるスピード自体は速くても、決算月というひとつの入力項目には、こうした長期的な影響が積み重なっていることを忘れずに、自分の会社に合った月を選んでください。

会社法(法令本文)(デジタル庁)を参照。



