この記事は、マネーフォワード クラウド会社設立を使って株式会社の設立を自分で進めようとしている人のうち、「自分のケースは対応してもらえるのか」が気になっている人に向けて書いています。会社設立の全体の流れはすでに知っていても、特定の条件を満たすと、このツールだけでは会社設立が完結しない場合があります。ここでは、公式ヘルプが明記している非対応のケースと、会社設立を進めるうえで誤解されやすいポイントを、先に整理します。
マネーフォワードが対応するのは「株式会社」と「合同会社」の標準的な設立だけ
マネーフォワード クラウド会社設立の公式FAQ(更新日:2026年3月3日)によれば、対応する会社形態は株式会社と合同会社の2つに限られます。合資会社・合名会社・NPO法人・一般社団法人といった形態の会社設立は、このツールでは扱えません。
株式会社・合同会社であっても、対応するのは「標準的な発起設立」による会社設立の場合です。現物出資や資本準備金の計上、募集設立といった、通常より複雑な方法での会社設立を予定している場合は、入力フォームだけでは対応できず、司法書士など専門家へ個別に相談する必要があります。自分が進めようとしている会社設立が、この標準的な条件を満たすかどうかを、着手前に確認してください。ここでいう発起設立とは、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方式のことです。発起人以外からも出資者を募る募集設立という方式もありますが、こちらは対象外です。一人社長や少人数の株式会社であれば、会社設立の多くは発起設立にあたるため、大半の読者はここで立ち止まる必要はありません。
自分で会社を設立するつもりで調べ始めた人ほど、「とりあえず入力してみればわかるだろう」と考えがちですが、非対応のケースに気づかないまま入力を進めてしまうと、後半の工程でつまずいて手が止まる原因になります。次の章から、代表的な非対応パターンを順に見ていきます。

取締役会を置く設計は、公式に対応外と明記されている
会社設立の相談で見落とされやすいのが、この機関を設置する株式会社です。マネーフォワードの公式FAQでは、この形態を対応外のスコープとして明記しています。設立の時点でこの機関設計にしたい場合、このツールでは会社設立の書類を作成できません。
非公開の小さな株式会社であれば、この機関を置かない設計(取締役1名からでも会社設立ができる)を選べば、標準フローに沿って自分で進められます。要否で迷っている場合は、会社の規模や今後の株主構成を踏まえて、着手前に機関設計そのものを決めておくことをおすすめします。設計次第で、同じ形態の会社設立でも対応の可否が変わってくる、という点を押さえておいてください。取締役会を設置しない会社では、取締役は1名で構いません。監査役の設置も義務ではなく、代表者一人だけで会社設立を完結させることも法律上は可能です。逆に、将来的に投資家を複数迎える予定がある、株主総会以外の意思決定機関を用意したい、といった事情でこの機関を置きたい場合は、最初からマネーフォワードとは別の方法で書類を準備する前提で、あらかじめ計画を立ててください。


海外居住者・未成年者・法人が役員になる場合の注意
役員や発起人になる人の属性にも、対応できないパターンがあります。公式FAQによれば、海外に住んでいる人や未成年者が役員・発起人になる場合、法人が代表取締役や取締役、代表社員に該当する会社の場合は、いずれもこのツールでは扱えません。
会社法そのものは、発起人や取締役の資格に国籍や日本国内居住の要件を置いていません。海外在住であっても株式会社の役員になること自体は法律上できますが、ツールの入力フォームがこうしたケースに対応していない、という点は別の話です。該当する場合、会社設立そのものは可能でも、この手段では進められないため、司法書士へ直接相談する方法を検討してください。なお、法人が役員に就任できないという制限は、株式会社の取締役だけでなく合同会社の業務執行社員についても同様に案内されています。合同会社での会社設立を視野に入れているときでも、役員・社員の属性による対応外パターンも共通して確認してください。なお、代表取締役の全員が海外居住者であっても株式会社を設立できるという扱いは、平成27年3月16日法務省民商第29号通達によって確立されたものです。それ以前は代表取締役のうち最低1名が日本に住所を持つ必要があるという登記実務上の運用がありましたが、この通達で廃止されています。法律上できることと、マネーフォワードという特定のツールが対応しているかどうかは、常に別の問題として切り分けて考えてください。

「オンラインだけで完結する」という誤解
マネーフォワードで会社設立の書類を作れば、あとはオンラインで手続きが終わると考えている人も少なくありません。しかし公式の案内によれば、作成した登記書類はダウンロード・印刷して法務局の窓口へ持参または郵送する運用が前提になっています。
電子定款についても、認証を終えた定款を公証役場から受け取る工程や、資本金の払い込みを証明する書類の準備は、画面の外で自分が動く部分です。この作業のうち、どこまでが入力だけで終わり、どこから先に自分の行動が必要になるのかを、着手前に把握しておくと、途中で手が止まりにくくなります。「全部オンラインで完結する」という思い込みのまま進めると、この段階で戸惑う人が多いようです。具体的には、「法務局へ登記書類の提出」という画面でダウンロードした書類一式を、自分で印刷して法務局の窓口へ持参するか、郵送する必要があります。登記完了予定日を過ぎたあとも、「法務局での書類の受け取り」という画面の案内に沿って、再度法務局へ足を運び、登記事項証明書を受け取る工程が残っています。ここまでを見越したスケジュールを組んでおくと、会社設立の作業全体の見通しが立てやすくなります。


電子定款はマネーフォワードではなく提携行政書士が作成する
電子定款の作成・電子署名を行うのは、マネーフォワードと提携する行政書士です。マネーフォワード自身が定款を作っているわけではなく、有料プランを契約しているケースでは、この行政書士へ支払う費用(通常税込5,000円)をマネーフォワードが負担する、という立場にとどまります。
この仕組みを理解しておくと、電子定款が仕上がるまで数営業日かかる理由や、無料プランのままだと5,000円が自分の負担になる理由も納得しやすくなります。かかる費用の内訳を整理した記事もあわせて確認してください。誰が何を担当しているのかを分けて考えると、会社設立全体の見通しが立てやすくなります。実務としては、「定款の作成方法の選択」画面で電子定款を選ぶと、行政書士が公証人と連絡を取り合って認証の手続きを進め、「定款の受け取り」画面の案内に沿って、指定した公証役場から認証済みの定款を受け取る流れになります。この専門家が代わりに動いてくれる部分と、自分で公証役場まで受け取りに行く部分が混在している、という理解を持っておくと迷いにくくなります。

全部おまかせしたい場合は、有料の登記代行プランという選択肢もある
取締役会の設置や役員の居住地に関する条件のように、標準フローが対応していない場合や、そもそも入力や窓口への訪問を自分でやりたくない場合、公式には有料のサービスで司法書士に依頼する選択肢が案内されています。
これは、無料の標準フロー(自分で入力し、自分で窓口へ持参する)とは別の、有料の代行サービスです。会社設立を自分で進める前提でこの記事を読んでいる人にとっては優先度の低い選択肢かもしれませんが、対応外のケースに当てはまってしまった場合の逃げ道として知っておくと安心です。進め方を自分だけで決めきれないときは、こうした選択肢の存在も判断材料に加えてください。この有料サービスの料金は個別の見積もりによるため、この記事では具体的な金額を示しません。対応外に該当しそうな場合は、公式サイトから問い合わせて、自分の状況でも依頼できるか、費用がどの程度になるかを先に確認しておくと、後戻りが少なくて済みます。


マネーフォワードとfreeeで迷ったときに見るべき違い
会社設立freeeマネーフォワード比較で検索する人も多いはずです。両社とも会社設立の書類作成を無料で支援するという基本設計は共通していますが、登記書類の提出方法には違いがあります。マネーフォワードは登記書類を印刷して法務局の窓口へ提出する前提で案内している一方、freeeは公証役場・法務局への申請をオンラインで進めるフローを案内しています。
電子定款作成の事務手数料が発生する仕組みは両社共通で、対象の有料プランを契約すればその費用を負担してもらえる点も同じです。どちらが優れているかを一律に決めることはできず、対応してほしい会社形態や、窓口への訪問をどこまで自分で行いたいかによって、会社設立にどちらのツールを選ぶかは変わってきます。マネーフォワードの公式ページでは、利用者アンケート(自社調査、回答者1,449名、2025年10月23日更新のページによる)で約90%が満足していると回答した結果も紹介されていますが、これは自社調査であり、第三者機関による比較調査ではない点は踏まえておいてください。同じページでは、改善要望として「定款認証にかかる時間の見通しが分かりにくい」「オンライン申請の支援がない」といった利用者の声も紹介されています。後者はまさに先ほど触れた、書類を自分で法務局へ持参する運用と関係する声だと考えられます。判断に迷う場合は満足度の数字だけを見るのではなく、この記事で挙げた対応スコープ(取締役会設置会社の可否、登記書類の提出方法など)を両社のFAQで直接見比べたうえで、自分の会社設立に合う方を選んでください。すでにマネーフォワードで入力を始めている場合、非対応のケースに当てはまらない限り、途中でツールを乗り換える必要はありません。

まとめ:非対応の条件に自分が当てはまるか、書類作成を始める前に確認する
ここまで見てきたとおり、マネーフォワードで会社設立を自分で進める場合、対応する会社形態(株式会社・合同会社)と、対応できないパターン(特定の機関設計や役員の居住地に関する条件など)を先に確認しておくことが、途中で手が止まらないための近道です。電子定款の作成主体や、登記書類を法務局へ自分で持参する必要がある点も、誤解しやすいポイントとして押さえておいてください。
自分の会社設立がどのパターンにも当てはまらないなら、あとは入力フォームに沿って手続きを進めるだけです。会社名・本店所在地・代表者・事業目的・資本金額・決算時期といった基本情報を入力する「会社情報入力」画面から始まり、印鑑の準備、定款まわりの手続き、法務局への書類提出という順で進んでいきます。この記事で挙げた対応外のパターンに一つも当てはまらなければ、迷わずこの流れに沿って会社設立を進めて構いません。合同会社での会社設立を考えているなら、株式会社との違いを整理した記事も参考にしてください。まずは公式FAQで自分の状況を照らし合わせるところから始めてみてください。




