この記事は、合同会社という形態でマネーフォワード クラウド会社設立を使い、自分で会社設立を進めようとしている方に向けて書いています。株式会社向けの情報が世の中に多いためか、合同会社の手続きにも同じ内容がそのまま当てはまると思い込んでいる方が少なくありません。定款・登録免許税(0.7%の税率で計算する国税です)・電子申請の条件・信用力・利益配分という5つのテーマについて、よくある誤解を公式情報と会社法の条文で一つずつ確かめていきます。すでに手続きを始めている方も、ここで思い込みが混ざっていないか点検してください。
株式会社向けの手順をそのまま流用できる、という誤解
マネーフォワード クラウド会社設立は株式会社・合同会社の両方に対応しているため、株式会社向けに書かれた手順やブログ記事を、合同会社にもそのまま当てはめられると考えている人がいます。実際には会社形態を選んだ時点で、以降の画面表示や自動作成される書類は選んだ形態に応じて切り替わり、途中の工程も同じではありません(2026年8月21日時点、公式ヘルプによる)。マネーフォワード クラウド会社設立が対応する会社形態は株式会社と合同会社の2種類のみで、合資会社・合名会社などには対応していません(2026年8月21日時点、公式FAQによる)。
この思い込みのまま進めると、不要な工程を探して手が止まったり、逆に必要な工程を見落としたりします。この記事では、株式会社の情報を先に調べたことがある人ほど陥りやすい5つの誤解を順番に取り上げます。まず、もっとも影響が大きい定款まわりの誤解から見ていきます。
マネーフォワードが案内する3ステップ(会社情報入力・書類作成と申請・設立後の届出)という骨組み自体は共通ですが、各ステップの中身は形態によって変わります。この記事を読み終える頃には、合同会社として会社設立を自分で進める際に、どこまでが株式会社と共通で、どこからが違うのかがはっきりします。会社設立の相談先を探す前に、まずはこの記事で扱う5つの誤解を自分の理解と照らし合わせ、思い込みだけで判断していないかを確かめておいてください。


誤解1:合同会社は定款が不要だから、作成しなくていい
合同会社は定款認証がまるごと不要だと知ると、定款そのものを作らなくてよいと勘違いする人がいます。実際には、公証人による認証(チェック)が不要になるだけで、定款の作成自体は合同会社でも必須です。日本公証人連合会の説明でも、認証を必要としないのは持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)の定款についてであり、定款という書類そのものが不要になるとは説明されていません。
マネーフォワードでも、公式FAQ「合同会社の設立で用意するものを教えて下さい」で電子定款保存用の新しいCD-Rが案内されており、定款を作成し保存する工程は残ります。「定款の作成方法の選択」(Step2)の画面で電子定款・紙定款のどちらで進めるかを選ぶところまでは、株式会社と同じ流れです。マネーフォワードでの会社設立を検討し始めた段階でこの工程を飛ばせると誤解していると、必要書類のチェックリストに定款の項目が無いと思い込んでしまいます。
合同会社の場合、定款ができた時点で公証役場へ持ち込む工程がそのまま無くなり、資本金の払い込みへ進みます。定款そのものの記載事項(会社の目的・商号・本店所在地・社員の氏名や住所・出資の価額など)は、株式会社の定款と大きくは変わりません。「定款が要らない」ではなく「認証だけが要らない」というのが正確な理解です。この工程を勘違いしたまま会社設立を自分で進めると、定款を用意しないまま資本金の払い込みに進もうとして書類が揃わず、マネーフォワードの入力が途中で止まる原因になります。


誤解2:登録免許税も株式会社と同じ15万円が下限になる
登録免許税について、株式会社の相場である15万円がそのまま合同会社にも当てはまると考えている人も見かけます。実際には、合同会社の登録免許税は資本金の額の1000分の7で計算し、6万円に満たない場合は6万円が下限になります。株式会社は同じ0.7%の税率で計算しつつ15万円が下限で、この下限額こそが両者の差の大部分を占めます(2026年8月21日時点、法務局の案内による)。
資本金300万円の合同会社を例にすると、1000分の7で計算した額は2万1,000円となり6万円の下限を下回るため、実際に納める登録免許税は下限額の6万円です。資本金が857万円を超えたあたりから、計算した額そのものが6万円を上回り始め、以降は1000分の7の計算結果がそのまま登録免許税になります。
マネーフォワードの画面は、この1000分の7という計算式にもとづいて金額を試算しますが、実際の納付は法務局の窓口で収入印紙または現金により行う工程で、画面の中だけでは完結しません。「法務局へ登記書類の提出」(Step2)で登記申請書一式をダウンロードし、印刷したうえで法務局へ持参または郵送する流れになります。この登録免許税の下限額の違いを知らずに会社設立の総費用を見積もると、株式会社の相場をそのまま使ってしまい、合同会社の場合は実際より高い金額を想定してしまいます。逆に、資本金額が大きい合同会社では下限額ではなく1000分の7の計算結果がそのまま適用されるため、資本金が大きいほど登録免許税の負担も比例して増える点は共通です。会社設立にかかる費用を正しく見積もるには、この下限額の違いと、定款認証手数料が発生しない点の両方を反映させる必要があります。


誤解3:電子申請の条件は株式会社とまったく同じ
マネーフォワードの電子申請(オンラインでの登記申請)を利用できる条件を、株式会社の説明のまま覚えてしまっている人もいます。株式会社の条件の一つは「役員・株主が代表取締役1名のみ」ですが、合同会社の場合はこれが「代表社員1名のみ」に読み替えられます。さらに、マイナンバーカードとCDドライブの所持という条件のうち、CDドライブの所持は合同会社では不要と明記されています(2026年8月21日時点、公式ヘルプによる)。
この違いを知らずにCDドライブを探して準備してしまうと、不要な手間がかかります。逆に、代表社員が2名以上いる会社では、この電子申請の条件から外れるため、法務局の窓口へ持参または郵送で申請する方法に切り替える判断が必要です。自分の会社の代表社員数を、条件と照らし合わせて確認しておいてください。会社設立を電子申請で完結させたい場合は、この人数の条件を満たすかどうかが最初の分かれ目になります。
電子申請を使わない場合でも、マネーフォワードの画面では書類一式を自動作成できます。「会社情報入力」(Step1)で入力した内容をもとに登記申請書・定款・印鑑届書などのひな形が作られ、あとは印刷して持参するだけで済む形になります。この部分は電子申請の条件を満たすかどうかにかかわらず共通の工程です。電子申請の条件を満たせるかどうかは、会社設立を自分で進める際の作業時間にも直結するため、代表社員の人数を早い段階で確定させておくと、その後の入力をスムーズに進められます。

誤解4:合同会社は株式会社より必ず信用度が低い
定款認証が無く費用も抑えられることから、逆に「合同会社は信用度が低いから避けるべき」と決めつけてしまう人もいます。合同会社には株式という概念が無いため、株式を発行した資金調達や株式上場ができません。閉鎖的な機関設計であることなどから、銀行融資の審査や取引先との関係で株式会社より見劣りするという指摘があるのは事実です。
ただし、この指摘は業種や取引相手、実績によっても評価が変わるものであり、合同会社だから一律に信用が劣ると断定できる性質のものではありません。合同会社という制度自体は2006年に施行された会社法で新設された会社形態で、外資系企業の日本法人など、事業規模の大きい会社がこの形態を選んでいる例も存在します。
信用力を左右するのは会社形態そのものより、実際の事業実績や決算内容、取引先との関係の積み重ねであることが多いというのが実情です。合同会社を選ぶ場合でも、会社設立後の決算・納税の実績を丁寧に積み重ねることが、対外的な信用を築くうえでの土台になります。判断に迷う場合は、税理士など専門家に事業計画とあわせて相談する選択肢もあります。信用度だけを理由に会社設立の形態を決めるのではなく、マネーフォワードで自分の事業に必要な資金調達の方針を整理したうえで、合同会社と株式会社のどちらが合うかを考えるほうが、あとから後悔しにくい判断になります。

誤解5:利益配分は社員間で自由に決め直せる
合同会社は定款で利益(損益)の分配割合を出資比率と異なる形に定められるという説明を読んで、「出資や登記の手続きなしに、社員間の話し合いだけで分配を自由に決め直せる」と誤解する人がいます。会社法第622条は、定款に定めがなければ各社員の出資額に応じて分配する、というデフォルトルールを置いているにすぎません。
出資比率と異なる分配割合にしたい場合は、その旨を定款に明記することが法的な効力を持つための条件です。口頭の合意や、社員間だけのメモでは法的効力を持ちません。この自由度は、出資比率=議決権・配当割合が原則の株式会社と比べれば高いものの、「定款に書く」という手続きを経て初めて有効になる自由度です。
会社法第575条以下は持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)の設立・定款・業務執行の規律を定めており、合同会社の社員は原則としてそれぞれ業務執行権を持ちます。分配割合や業務執行の分担を変更したい場合は、定款変更の手続きとして扱われ、総社員の同意が原則として必要になります。話し合いだけで済ませず、必ず書面としての定款に反映させてください。定款変更には原則として総社員の同意が必要になる点も、株式会社の株主総会決議による定款変更とは異なる部分です。複数人で合同会社の会社設立を自分で進める場合は、この分配割合と業務執行の分担を、マネーフォワードで定款案を作成する前の段階で社員間の合意として固めておくと、入力後の修正が少なくて済みます。

各種証明書請求手続(法務局)を参照。
それでも株式会社にすべきか迷ったときの判断材料
ここまでの誤解を外したうえで、それでも株式会社にすべきか迷う人もいます。マネーフォワード クラウド会社設立を利用した場合の設立費用合計は、合同会社が6.5万円、株式会社が17.2万円という目安です(2026年8月21日時点、公式ページの内訳表示による)。この差額のほとんどは、定款認証手数料(株式会社は資本金額等により1万5,000円〜5万円の4段階)の有無と、0.7%の税率で計算する登録免許税の下限額の違いによるものです。会社設立にかかる初期費用を抑えたいだけであれば、この差額の大きさが合同会社を選ぶ理由として十分に成り立ちます。
将来、株式を発行した資金調達や上場を視野に入れているなら株式会社が選択肢になりますし、初期費用と手続きの手間を抑えたいなら合同会社という判断が成り立ちます。マネーフォワードの画面はどちらの形態でも共通の入力フォームを使うため、迷っている段階でも資本金額や事業目的といった基本情報の入力だけは先に自分で進めておけます。
合同会社として設立したあとで株式会社に組織変更することも制度上は可能ですが、この場合は別途、組織変更の手続きと登記費用が新たに発生します。最初にどちらの形態で会社設立を進めるかを決める段階で、この先の資金調達方針まで含めて自分で考えておくと、あとからの組織変更を避けやすくなります。マネーフォワード クラウド会社設立でどちらの形態を選んでも、会社情報を入力する画面自体は共通のため、迷った時点で両方の書類を試作してから最終決定する、という進め方も可能です。


まとめ:5つの誤解を外して、合同会社の会社設立を自分で進める
ここまで見てきた誤解は、定款の要否、1000分の7で計算する登録免許税の下限額、電子申請の条件、信用度の断定、利益配分の自由度という5つに整理できます。いずれも公式情報・会社法・日本公証人連合会の説明で確認できる内容であり、株式会社の情報をそのまま流用すると、どこかで実際の手続きと食い違います。
合同会社の会社設立をマネーフォワードで自分で進める場合、定款は作るが認証は無いこと、登録免許税は1000分の7で計算し6万円が下限であること、電子申請の条件は代表社員1名・CDドライブ不要に読み替えられることの3点を押さえておけば、株式会社向けの情報に惑わされにくくなります。この記事で挙げた5つの誤解を一つずつ確認しながら、合同会社としての会社設立を自分のペースで進めてください。



