この記事は、マネーフォワード クラウド会社設立を使って会社設立を自分で進めようとして、資本金の「最低額はいくらか」という制度そのものが分からず手が止まってしまった人に向けて書いています。「株式会社は資本金1,000万円が無いと作れない」という情報を目にして戸惑う人がいますが、これは平成18年(2006年)5月1日より前の旧商法の話です。現行の会社法には、この金額の下限を定める規定がありません。制度がいつ・なぜ変わったのかを一次情報で確認しながら、自分で資本金額を決めるときに知っておきたい現行ルールを、会社設立の実務に即して整理します。
株式会社の資本金に「最低額」があった時代
現在、自分の力で株式会社を設立しようとする人にとって、資本金額に法律上の下限はありません。ただしこれは最初からそうだったわけではなく、平成18年(2006年)5月1日より前は、旧商法により株式会社1,000万円、有限会社300万円という最低資本金制度がありました(中小企業基盤整備機構「J-Net21」、2026年8月21日確認)。この金額に届かなければ、株式会社という会社形態そのものを選べませんでした。
当時、会社設立を検討する人にとって、1,000万円という金額は大きな壁でした。旧商法時代の会社設立は、この基準を満たさない限り着手できず、個人の貯蓄だけでこの水準まで用意できない場合、株式会社ではなく有限会社を選ぶか、会社設立そのものを先送りするという判断を迫られる場面が珍しくありませんでした。
同じ時期に、有限会社という会社形態も新設できなくなりました。会社法の施行前からあった有限会社は「特例有限会社」として存続を認められましたが、施行後に新しく有限会社を設立することはできません。株式会社と有限会社という二つの制度が一本化された結果でもあります。
この制度は、現行の会社法とは別の法律である旧商法のもとで運用されていました。このあと、この制度がいつ、どのような法律の施行によって撤廃されたのかを確認します。

平成18年5月1日、会社法施行でこの制度は廃止された
旧商法にあった最低資本金制度は、平成18年(2006年)5月1日に施行された会社法により廃止されました。それまで商法・有限会社法など複数の法律に分かれていた会社に関する規定がこの会社法という一つの法律にまとめられ、そのタイミングで最低資本金制度そのものが姿を消しました(中小企業基盤整備機構「J-Net21」、2026年8月21日確認)。この会社設立に関するルール変更を知らずに、自分で古い情報のまま資本金額を決めてしまう例もあります。
会社法第445条は資本金の額の算定方法を定める条文ですが、この条文にも、それ以外のどの条文にも資本金額の下限そのものを定める規定はありません(デジタル庁 e-Gov法令検索、2026年8月21日確認)。制度が変わったのは20年前ですが、いまだに「株式会社には1,000万円が要る」という誤解を見かけることがあります。
マネーフォワード クラウド会社設立を使って会社設立の書類を自分で作る場合も、この現行制度を前提に、資本金額の入力欄へ好きな数字を入れられます。続く項目で、この条文が実際に何を定めているのかをもう少し具体的に見ていきます。

現行の会社法に、資本金の下限を定める条文は無い
会社法第445条は「株式会社の資本金の額は、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額を計算した額とする」という趣旨の条文で、金額の下限を定めているわけではありません(デジタル庁 e-Gov法令検索、2026年8月21日確認)。
定款の絶対的記載事項も、資本金額そのものではなく「出資される財産の価額又はその最低額」です(会社法第27条)。実務では、この価額欄に書いた金額と、登記する資本金額を一致させて設立するのが一般的です。制度上の下限が無いことと、定款に何を書くべきかは別の話として整理しておく必要があります。
会社法第34条は、発起人が定款作成後、遅滞なく、それぞれが引き受けた株式につき出資に係る金銭の全額を払い込む義務を定めています。払込みを怠れば設立の手続きが先に進まないため、金額の多寡にかかわらず、この出資の履行という手続きは発起人自身が期限内に終える必要があります。
つまり現行制度のもとでは、資本金1円でも株式会社を自分で設立すること自体は可能です。ただし、この金額をそのまま採用してよいかどうかは、次のセクションで扱う実務上の判断が別に要ります。

マネーフォワードの「会社情報入力」画面で、この金額を入力する
マネーフォワード クラウド会社設立では、「会社情報入力」という画面で、会社名・本店所在地・代表者・事業目的とあわせて資本金額を入力します(株式会社マネーフォワード公式ヘルプ、2026年8月21日確認)。ここに入力した数字は、定款や登記申請書一式のひな形に自動で反映され、会社設立の書類づくりが一気に進みます。この一連の操作が、会社設立をマネーフォワードで自分で進める最初のステップです。
この画面には、資本金額の下限を制限するチェックは組み込まれていません。1円と入力しても、次のステップに進めます。会社設立を自分で進める場合、この数字を止めるのはツールの仕組みではなく、利用者自身の判断です。
STEP1のサポートガイドでは、「発起人情報」欄や「電子定款を選択」のトグルなど、この画面周辺の入力項目についても解説されています(株式会社マネーフォワード公式ヘルプ、2026年8月21日確認)。資本金額は、この一連の入力の中でも、あとの工程に影響が大きい項目のひとつです。

資本金1円でも株式会社は作れるのか
現行制度のもとでは、資本金1円でも株式会社を自分の手で設立すること自体はできます。ただし「制度上できる」ことと「その金額で問題が起きない」ことは別の話です。資本金額は登記事項証明書(履歴事項全部証明書)に記載され、法務局で誰でも取得して確認できる公開情報になります。
取引先や金融機関は、実績のない新設会社を見るときの材料のひとつとしてこの数字を見ることがあります(中小企業基盤整備機構「J-Net21」、2026年8月21日確認)。1円という金額は、対外的な信用力という観点では不利に働く場面があります。
この元手は法人名義の口座に払い込まれたあと、そのまま設立直後の運転資金として使われます。家賃・仕入れ・人件費など月あたり30万円の固定費がかかる事業を資本金1円のまま始めると、初月から自己資金や借入に頼らざるを得ません。
資本金の額を最初は少なく設定し、あとで増資するという進め方も制度上は可能です。ただし増資には株主総会の特別決議や登記手続きが別途必要で、増加した資本金の額の1000分の7(0.7%、その額が3万円に満たない場合は3万円が下限)の登録免許税もかかります(法務局、2026年8月21日確認)。会社設立をマネーフォワードで自分で進める人が見落としやすいのが、この最初の設定と増資の手間の関係です。
会社設立を自分で計画する際は、この公開性と運転資金の両面を踏まえて数字を決める必要があります。次のセクションでは、資本金の水準が税務上どう扱われるかを確認します。


資本金の水準と、消費税の「新設法人」判定
資本金の額をどう決めるかは、会社設立の初期段階でマネーフォワードの入力画面に反映する数字であると同時に、税務上の扱いにも影響します。基準期間がない事業年度の開始日における資本金の額が1,000万円以上の法人は「消費税の新設法人」に該当し、原則として設立初年度から消費税の課税事業者になります(国税庁、2026年8月21日確認)。裏を返すと、この額が1,000万円に満たない場合は、原則として設立当初の課税期間は免税事業者になれます。
ただしこれは無条件の免除ではありません。特定期間(原則、設立第1期の開始日以後6か月間)の課税売上高、または給与等支払額の合計がこの基準を超えた場合は、条件により、その先の課税期間から課税事業者に切り替わります。この分岐の詳細は、資本金の決め方の判断材料でも扱っています。
資本金の額を1,000万円ちょうどに設定すると、この基準は「1,000万円以上」なので新設法人に該当し、免税の対象外になります。999万円などわずかに下回る設定でも、条件により、この基準を満たせば免税の対象です(国税庁、2026年8月21日確認)。
資本金の水準を1,000万円未満に抑えれば免税の可能性が残る、という理解は正しい一方、それだけで2期分の免除が確定するわけではない点は、この制度を自分で使う人が誤解しやすい部分です。次のセクションでは、この金額とは別の切り口である許認可業種の資本要件を見ていきます。

許認可が必要な業種は、資本金要件を個別に確認する
会社法に資本金の下限は無くても、事業内容によっては、開業に必要な許認可のほうに資本要件が定められている場合があります。会社設立をマネーフォワードで自分で進める人が見落としやすいのが、この許認可側の要件です。建設業許可では、請負契約を履行する財産的基礎として、自己資本の額が500万円以上であること、500万円以上の資金を調達する能力を有すること、または許可申請前5年間の継続営業実績のいずれかを満たす必要があります(国土交通省「建設業の許可とは」、2026年8月21日確認)。
労働者派遣事業の許可を受けるには、基準資産額(資産総額から負債総額・繰延資産・営業権を差し引いた額)が事業所数×2,000万円以上であること、かつ自己名義の現金・預金の額が事業所数×1,500万円以上であることなどの要件を満たす必要があります(厚生労働省「労働者派遣事業を適正に実施するために-許可・更新等手続マニュアル-」、2026年8月21日確認)。
つまり会社法上は資本金1円でも株式会社を設立できますが、これらの事業を営むつもりなら、設立時点の資本金額を許認可の基準に届く水準まで引き上げておいたほうが、あとから増資の手続きをやり直す手間を避けられます。飲食店の営業許可のように、資本金額そのものは条件にならない許認可も多くあります。
介護事業や旅行業などにも、都道府県や国土交通省が定める独自の資力要件がある場合があります。事業目的を決める段階で、所管窓口に必要な資本金の水準を確認しておくと、設立後に増資し直す手間を避けられます。
会社設立を自分で進める場合、この許認可要件の確認は、マネーフォワードの入力画面の外側にある作業です。事業目的に応じた許認可の要否は、インボイス登録で課税事業者になる分岐とあわせて、所管する官公庁や自治体の窓口に確認してください。


まとめ|「下限が無い」ことと「いくらでもよい」は別の話
ここまで見てきたとおり、株式会社の資本金には、平成18年(2006年)5月1日の会社法施行によって最低資本金制度が廃止されて以来、法律上の下限がありません。旧商法の1,000万円という基準は、現在の制度には存在しない過去のルールです。マネーフォワードで会社設立を自分で進める人が最初に確認すべきなのは、この歴史的な経緯です。
ただし「下限が無い」ことは「いくらでもよい」ことを意味しません。資本金額は登記事項証明書として公開され、資本金が1,000万円に満たない場合は原則として設立当初の消費税が免税になる一方、特定期間の基準を超えれば条件により課税事業者に切り替わります。建設業許可の自己資本500万円、労働者派遣事業の基準資産額2,000万円のように、事業内容によっては別の法律が資本要件を定めている場合もあります。
マネーフォワードの「会社情報入力」画面はどんな数字でも受け付けますが、その数字が信用面・税務・許認可のどこに影響するかまでは教えてくれません。自分の判断で会社設立を進める人ほど、この記事で挙げた運転資金・信用力・資本金の額が1,000万円という基準を下回るか否かで、条件により結論が変わる消費税の扱い・許認可の資本要件という4つの視点を、事業計画と照らして自分で比べる必要があります。迷う場合は、税理士など専門家に事業計画を示して相談する方法もあります。
この記事で挙げた登録免許税の1000分の7という税率、資本金の額が新設法人の基準を下回る場合の消費税の扱い、建設業許可の自己資本500万円、労働者派遣事業の基準資産額2,000万円という数字は、いずれも2026年8月21日時点で一次情報を確認したものです。制度は変わり得るため、実際に手続きを進める際は、国税庁・法務局など所管省庁の公式ページで最新の数字を確認してください。




