この記事は、株式会社という会社形態を選んだうえで、マネーフォワード クラウド会社設立を使って自分で手続きを進めようとしている方に向けて書いています。合同会社ではなく株式による会社を選ぶ理由、発起人や取締役といった要件、そして株式会社だけに求められる定款認証の手続きを、公式情報と会社法の条文にもとづいて整理します。すでに会社設立の全体的な流れを確認済みの方は、ここでは形態選びに絞った内容を読み進めてください。
株式による会社という選択の前に、会社設立の入り口で整理しておきたいこと
合同会社ではなく株式で資金を集める形態を選ぶ場合、まず両者の違いを自分の中で言語化しておくと、その後の手続きで迷いにくくなります。株式を発行して出資者(株主)を募れる点が対外的な信用力や将来の増資のしやすさにつながる一方、合同会社は定款認証が不要で会社設立の費用を抑えられる分、上場を前提としない小規模な事業に向く形態だとされています。
マネーフォワード クラウド会社設立は株式会社・合同会社の2形態に対応するクラウドサービスで、会社情報を入力するだけで両方の設立書類を自動作成できます。ただしどちらの形態にするかという判断そのものはツールが代わりに行ってくれるわけではなく、事業の資金調達方針や将来の株主構成を踏まえて自分で決める工程です。株式で資金を集める道を選んだ時点で、合同会社にはない工程がいくつか加わることも、手続きを始める前に知っておきたい点です。
この記事では株式会社に的を絞り、発起人・取締役・定款の認証といった特有の要件と、マネーフォワードの画面がそれらをどこまでカバーするのかを、会社法の条文とあわせて見ていきます。自分で会社設立を進めたい方は、まずここで全体像をつかんでください。Step1〜3の画面と費用の実額を整理した記事もあわせて確認すると、入力後の流れがつかみやすくなります。

株式会社にだけ必要な、定款認証という工程
両者を分ける大きな違いが、作成した定款を公証役場で公証人に認証してもらう手続きです。この認証が必要になるのは株式発行型の会社形態だけで、合同会社は定款の作成だけで足り、認証の手続きはありません。マネーフォワードの画面上で内容を作成できても、認証そのものは公証役場という画面の外の窓口で行われます。
定款認証手数料は、資本金の額と発起人の人数といった条件により1万5,000円〜5万円の4段階に分かれます(2026年8月21日時点、日本公証人連合会の案内による)。資本金額が小さいほど低い段階に収まる仕組みで、この手数料は株式で資金を集める形態を選んだ場合にだけ発生する費用で、こちらの形態であれば不要になります。
マネーフォワードの有料プランを使うと、電子定款の作成・電子署名を提携行政書士に依頼でき、紙の定款で必要になる収入印紙代4万円が不要になります。ただし電子であっても、公証役場へ支払う金額は状況に応じて別途かかる点は変わりません。認証済みの定款を受け取ったあとは、公証役場ではなく入力画面に戻り、発起人全員分の印鑑証明書を添えて登記申請書の作成に進みます。


発起人1人・取締役1人でも設立できる、という会社法の前提
「発起人や役員を何人もそろえないと会社設立ができない」と思い込んでいる人がいますが、会社法第25条2項により、発起人は1人でも発起設立ができます。役員についても、会社法326条1項が「1人又は2人以上の取締役を置かなければならない」と定めるにとどまるため、後述する取締役会を置かない設計であれば、たった1人で発起人と設立時取締役を兼ねる形をつくれます。
この発起人と取締役を同一人物にすることも可能で、この場合はマネーフォワードのStep1「会社情報入力」画面で、発起人情報と設立時取締役の情報に同じ人物を入力する形になります。一人だけで設立を進めるケースは、会社法上まったく特別な扱いではなく、非公開の小規模な会社では広く選ばれている構成です。
発起人には自然人だけでなく法人もなれますが、マネーフォワード クラウド会社設立は、法人が代表取締役・取締役・監査役に就任する会社の設立には対応していません(2026年3月3日時点の公式FAQによる)。自分の会社にこのケースが当てはまる場合は、有料の登記代行プランで司法書士に相談する必要があります。会社設立を自分で進めるつもりでも、この条件に該当するかどうかは入力前に確認しておく価値があります。
役員の資格には、国籍や日本国内居住の要件もありません。会社法第331条1項が定める欠格事由は法人であることや一定の犯罪歴による制限に限られ、外国籍や海外在住でも発起人・代表取締役になれます。かつては代表取締役のうち1名は日本に住所が必要という登記実務上の扱いがありましたが、平成27年3月16日法務省民商第29号通達により廃止され、全員が海外居住でも登記申請ができるようになりました(法務省サイトによる)。ただし法人口座の開設可否など銀行実務側の制約は別途あり得るため、法律上の要件と銀行実務の制約は分けて整理しておきます。

取締役会という機関を置くかどうかで、対応範囲が変わる
会社法第326条2項により、取締役会は定款の定めによって任意に設置する機関であり、すべてに必須というわけではありません。設置が義務になるのは、公開会社や監査役会設置会社など会社法327条1項に該当する場合に限られ、非公開で小規模なら置かない設計を選べます。
マネーフォワード クラウド会社設立が対応するのは、標準的な発起設立です。取締役会ありの設計、現物出資を伴う設立、募集設立、代理人による登記申請には対応していません(2026年3月3日時点の公式FAQによる)。役員を3人以上そろえてこの機関を設置したいと考えている場合、この対応範囲の外にあたる点を、会社設立を始める前に確認しておいてください。
該当する設計を選びたい場合や、海外居住者・未成年者・法人が役員になる場合は、公式FAQが案内する有料の登記代行プランを使い、司法書士に個別相談する流れになります。自分で完結させたい構成が対応範囲に収まっているかどうかを最初に確認しておくと、入力の途中で手が止まらずに済みます。
なお、取締役会を置く場合は、会社法第327条2項により原則として監査役も置かなければなりません(非公開かつ会計参与を設置している場合を除く)。この組み合わせは役員の人数がさらに増えるため、マネーフォワードが想定する構成と比べて、準備する書類や選任の手間も相応に増えます。この違いも、機関設計を自分で決める際の判断材料になります。


Step1の入力画面で、機関の構成をどう決めるか
マネーフォワードのStep1「会社情報入力」画面では、会社名・本店所在地・代表者・事業目的・資本金額・決算時期に加えて、発起人(出資者)や設立時取締役といった役員の情報を入力します。一人で進める場合は、発起人欄と取締役欄に同じ人物の情報を入力する形になります。
この画面での入力内容は、そのまま定款の記載事項や登記申請書に反映されます。資本金額や、発起人および取締役の氏名はそのまま登記の記載事項になります。合同会社よりも対外的に情報が見えやすい会社形態だという点も、入力を始める前に把握しておきたいところです。
入力自体はフォームに沿って進めるだけで完了しますが、機関の構成(取締役会を置くかどうか)や資本金額といった経営判断そのものは、ツールが代わりに決めてくれるわけではありません。マネーフォワードで自分で会社設立を進める場合でも、この部分だけは自分で判断する工程として残ります。入力が終わると、次のStep2で印鑑購入や定款の認証手続きに進みます。
法務局の窓口に持参する必要書類も株式会社ならではの分量になります。登記申請書のほか、認証済みの定款、発起人全員の印鑑証明書、資本金の払込みを証する書面、取締役の就任承諾書などが基本セットで合同会社の設立に比べて添付書類が一点多くなるのが実情です。画面上ではこれらの書類のひな形を自動作成しますが、印鑑証明書の取得だけは市区町村窓口へ自分で出向く必要があります。

登録免許税は、会社形態によって下限額が変わる
登録免許税は、どちらの会社設立でも法務局への登記申請時に発生する国税です。株式を発行する会社の場合は資本金の額の1000分の7、15万円に満たない場合は15万円が下限になります。合同会社の場合は同じく資本金の額の1000分の7ですが、6万円に満たない場合は6万円が下限という違いがあります(2026年8月21日時点、法務局の案内による)。
資本金額が2,143万円を超えると、前者でも計算した額が最低15万円を上回り、下限額ではなく計算した額そのものが登録免許税になります。金額を決める際は、この下限額の違いも判断材料の一つになります。
マネーフォワードの画面は、この1000分の7という計算式にもとづいて登録免許税の金額を試算する機能を備えていますが、実際の納付は収入印紙または現金で法務局の窓口で行う工程であり、画面の中だけでは完結しません。マネーフォワード公式「会社設立の流れ」ページによれば、登記書類はダウンロードして印刷したうえで法務局へ持参する前提で案内されており、この提出と受け取りは自分の足で窓口に出向く工程です。総費用を見積もる際は、この登録免許税と、条件により金額が変わる公証役場の手数料をあわせて把握しておく必要があります。


法務局:管轄のご案内(法務局)を参照。
資本金をいくらにするか、決め方と登記事項の重み
会社法には資本金額の下限を定める規定がなく、どちらの形態でも1円から会社設立ができます(平成18年会社法施行による最低資本金制度の廃止)。ただし金額は登記事項として公開されるため、この形態では取引先や金融機関からの信用にかかわる情報として扱われる場面があります。
消費税についても、基準期間がない設立初年度は原則として資本金1,000万円未満であれば免税事業者になれますが、条件により特定期間の課税売上高や給与等支払額が1,000万円を超えると、第2期から課税事業者になります。いくらにするかは、当面の運転資金の見込みとあわせて自分で判断する必要がある項目です。
マネーフォワードのStep1画面では金額を記入するだけで定款や登記書類に反映されますが、その妥当性を判定してくれるわけではありません。事業計画に応じて自分で結論を出す工程として残り、この判断は合同会社を選んだ場合でも変わらず必要になります。

登録免許税と定款認証、法定費用の総額を比べる
この形態でかかる法定費用は、登録免許税(最低15万円)と定款認証手数料(1万5,000円〜5万円)を合わせた額が中心になります。金額は資本金額に応じて変わるものの合同会社は定款認証が不要なため登録免許税(最低6万円)だけで済み、法定費用の総額は低く抑えられます(2026年8月21日時点、法務局・日本公証人連合会の案内による)。
この差額は、株式を発行できる形態を選ぶことの対価とも言えます。信用力や、株主総会・取締役といった機関を備えた組織としての体裁を重視するなら、この費用差を踏まえたうえでの判断になります。
マネーフォワードの利用自体は無料で、書類作成や情報入力の部分に追加費用はかかりません。会社設立で実際に発生する費用は、あくまで登録免許税・定款の認証にかかる手数料・印鑑代といった、制度上必要になる費用です。この内訳を分けて把握しておくと、見積もりの段階で自分の予算と照らし合わせやすくなります。無料と有料プラン3種を自分で比較した記事も、電子定款の作成費用を無料にする条件を確認する際の参考になります。


まとめ:株式会社をめぐる判断を、自分でどこまで引き受けるか
ここまで見てきたように、株式を軸にした形態を選ぶということは合同会社にはない定款認証という工程を受け入れ、発起人・役員の構成を自分で決めるということでもあります。実際、発起人1名・取締役1名という一人社長の組み合わせは会社法上認められていますが、取締役会ありの機関設計や現物出資を伴う設立は、マネーフォワード クラウド会社設立の対応範囲の外にあります。
この登録免許税(計算式は1000分の7、株式会社は15万円が下限)や定款認証手数料(1万5,000円〜5万円の4段階)は、この形態を選んだ以上、会社設立の方法を問わず必ず発生する費用です。画面はあくまで入力から書類作成までを自分のペースで進められるようにしてくれますが、機関をどう組むかや金額の判断、公証役場・法務局での手続きは自分自身の役割として残ります。まずは対応範囲が自分のケースに当てはまるかを確認し、株式会社としての会社設立を一歩ずつ進めてみてください。




