この記事は、マネーフォワード クラウド会社設立を使って株式会社の設立を自分で進めようとしている人のうち、良い評判だけでなく、ツールの限界やデメリットにあたる部分も先に知っておきたい人に向けて書いています。マネーフォワードは公式アンケートで高い満足度を公表している実在のサービスであり、機能が乏しいという根拠のない話をするつもりはありません。そのうえで、非対応の会社形態、画面の外で自分が動かなければならない工程、費用のうち自分の持ち出しになる部分など、事実にもとづくデメリット・限界を、公式情報を出典として条件つきで整理します。
「デメリット」を考える前に確認しておきたい満足度調査
マネーフォワード クラウド会社設立のデメリットを整理する前に、まず確認しておきたい数字があります。マネーフォワード公式ページ「利用者の評判とサービス満足度のご紹介」(更新日:2025年10月23日、2026年8月21日確認)によれば、利用者1,449名を対象にしたアンケートで、約90%が「満足している」と回答しています。あわせて、電子定款を選んだ利用者の割合は約98%にのぼるとされています。
ただし、この90%という数字はマネーフォワード自身が実施した自社調査であり、第三者機関による調査ではありません。デメリットを検討する際は、この前提を踏まえたうえで数字を読むことが欠かせません。同じ公式ページでは、改善要望として「定款認証にどれくらいの時間が掛かるのか事前に分かると良かった」「オフラインでの申請が前提であり、オンライン申請の手助けをしてくれるような内容ではなかった」という回答も紹介されています。この2点は、以降のセクションで扱う具体的なデメリットと重なります。
「満足度が高い=デメリットがない」という単純な話ではありません。満足度調査の数字と、利用者が挙げた改善要望の両方を見たうえで、自分のケースに当てはまる限界があるかどうかを、次のセクションから順に確認していきます。初めての会社設立という手続きに取り組む人にとって、この種の一次情報は数少ない定量的な手がかりであり、良い面・気になる面の両方を先に押さえておくことが、会社設立を自分のペースで進めるための土台になります。

対応していない会社形態・進め方がある
マネーフォワード クラウド会社設立が対応する会社形態は、株式会社と合同会社の2つに限られます。公式FAQ「『マネーフォワード クラウド会社設立』ではどのような会社を設立できますか?」(更新日:2026年3月3日、2026年8月21日確認)によれば、合資会社・合名会社・NPO法人・一般社団法人といった形態は対象外です。株式会社を作りたい場合は大きな制約ではありませんが、これから作る会社の形態によっては、この時点で対応外になるケースがあります。
株式会社・合同会社であっても、対応するのは標準的な発起設立に限られます。同じ公式FAQでは、取締役会を設置する株式会社、現物出資を伴う設立、資本準備金の計上、募集設立、代理人による登記申請、自分で作成した定款の認証は、いずれも対応外と明記されています。加えて、海外に住んでいる人や未成年者が役員・発起人になる場合、法人が代表取締役・取締役・監査役・代表社員・業務執行社員に該当する場合、学校法人が役員・発起人になる場合も対象外です。
これらに該当する場合、無料の標準フローでは会社設立の書類を作成できません。公式FAQでは、該当するケースでも有料の「登記代行プラン」を使えば司法書士に個別相談できる可能性があるとしています。自分の会社の機関設計や出資者の顔ぶれが、このどれかに当てはまらないかを、入力を始める前に確認する作業が欠かせません。これから会社設立を計画している人の大半は標準的な発起設立に収まりますが、共同創業者に海外在住のメンバーがいる、法人として出資したいといった事情がある場合は、この非対応リストと照らし合わせておくと、会社設立の途中で計画を組み直す事態を避けられます。


入力すれば全部終わるわけではない:自分で動く工程が残る
会社設立の入力を終えれば、あとはオンラインだけで手続きが完了すると考えている人もいますが、これは正確ではありません。公式「会社設立の流れ」ページ(2026年8月21日確認)によれば、STEP2は「印鑑購入」「定款の作成方法の選択」「定款の受け取り場所の選択」「出資金の入金」「法務局へ登記書類の提出」という小ステップで構成されており、電子文書として定款を作成した場合も、認証済みの定款は自分で公証役場から受け取る前提です。
定款を電子的に作成し、電子署名を行うのは、提携する行政書士です。マネーフォワード自身が定款を作っているわけではなく、法人向けプランの契約時は、この行政書士へ支払う事務手数料をマネーフォワードが負担する立場にとどまります。定款を受け取ったあとは、発起人名義の口座へ出資金を自分で振り込み、法務局への提出も自分の手で行うことになります。
公式FAQに紹介されている改善要望のとおり、この設計はオンライン申請の代行を求める人にとってはデメリットに映ります。すべてを画面の中で完結させたい、窓口へ足を運ぶ回数を減らしたいという人は、標準フローの範囲では希望をかなえられません。この点は、有料の登記代行プランを使うかどうかの判断材料になります。手続き全体を振り返ると、画面内で完結する範囲と、自分の足で動く範囲がはっきり分かれている、という構造そのものを最初に理解しておくことが、会社設立を計画どおりに進めるうえでの前提になります。


登記書類は印刷して法務局へ持参する前提という設計
登記書類の提出方法にも、あらかじめ知っておきたい設計上の限界があります。マネーフォワード公式「会社設立の流れ」ページは、STEP2の説明として「ダウンロードした登記書類を印刷し法務局に提出します」と案内しており、印刷・持参が前提の作りになっています(2026年8月21日確認)。オンラインで登記申請そのものを完結させる案内は用意されていません。
この設計は、窓口へ出向く時間を確保しづらい状況では、この設計がデメリットになり得ます。ただし、登記の受理・審査・完了を最終的に行うのは法務局であり、どのツールを使っても法務局が登記を完了させる立場にある点は変わりません(法務省「登記-商業・法人登記-」による)。ツール側の案内方法の違いであって、法務局の審査という手続きの本質そのものを省略できるわけではありません。
窓口へ足を運ぶのが難しい、遠方に住んでいるといった事情がある場合は、司法書士へ登記申請を依頼する方法もあります。マネーフォワードの標準フローのままでは印刷・持参の手間が残るという前提を先に理解しておくと、登記の段取りを立てやすくなります。株式会社の会社設立にあたる登記の手続きは、最終的には法務局の窓口業務そのものであり、この部分をどこまで自分でこなすかが、会社設立全体のスケジュールを左右します。

登録免許税・定款認証の費用は無料の対象外
マネーフォワード クラウド会社設立は、書類作成・利用登録そのものは0円(無料)です。しかし、この無料の範囲には、法律で定められた2つの法定費用は含まれていません。この2つは、マネーフォワードを使っても、専門家に依頼しても、必ず自分で負担する費用です。会社設立の総費用を見積もる際は、無料の書類作成費用とは別枠として、この2つを最初から予算に組み込んでおく必要があります。
登録免許税は、資本金の額の1000分の7(0.7%)で計算し、この金額が15万円に満たないときは15万円になります(中小企業庁「会社設立時の登録免許税の軽減について」による)。つまり15万円は下限であり、資本金額が大きければこれを上回ります。定款認証手数料は、資本金額と発起人の要件によって、1万5,000円・3万円・4万円・5万円の4段階に分かれています(日本公証人連合会「会社の定款手数料の改定」、令和6年12月1日から適用、2026年8月21日確認)。
「マネーフォワードを使えば費用がかからない」という理解のまま進めると、登録免許税と定款認証、この2つの法定費用を見落とし、想定より出費がかさんだと感じる原因になります。自分の資本金額でどの段階に該当するかは、入力を始める前に自分で調べておくべき事項です。この2つの費用はマネーフォワードのデメリットというよりも、株式会社の会社設立そのものに法律上必ず伴う負担であり、専門家に依頼した場合でも金額自体は変わりません。

電子定款の手数料5,000円は、無料プランだと実費になる
電子定款を選ぶと、行政書士が定款を作成・電子署名するための事務手数料として、通常税込5,000円がかかります。マネーフォワード クラウド会社設立の書類作成そのものは無料ですが、この費用は無料の範囲には含まれず、有料プランを契約しない限り自分で支払うことになります。
この費用を無料にするには、法人向けの有料プランを契約する必要があります。税込年額32,736円のひとり法人プラン、同59,136円のスモールビジネスプラン、同85,536円のビジネスプランのいずれかを契約すると、行政書士への支払い分をマネーフォワードが負担する特典が付きます(マネーフォワード公式の料金ページより、2026年8月21日確認)。逆に言えば、有料プランを契約しない場合は、この5,000円が会社設立の実費として上乗せされます。
紙定款で進める場合は、この事務手数料は不要になる代わりに、収入印紙40,000円が必ず発生します。電子定款・紙定款のどちらを選んでも、定款認証そのものの手数料(前のセクションで触れた1万5,000円〜5万円)は別途かかります。自分がどのプランで進めるかによって、実際の自己負担額が変わる点を、費用を見積もる段階で押さえておいてください。無料のまま会社設立を進めたい人ほど、この5,000円という実費がデメリットとして意識されやすい部分です。


設立後の税務・社会保険・決算・役員報酬までは自動化されない
マネーフォワード クラウド会社設立の役割は、STEP3「会社設立後の手続き」の画面でも、それまでに入力した情報をもとに、年金事務所・税務署・都道府県税事務所へ提出する届出書類を自動作成するところまでです。実際にこれらの窓口へ提出する作業や、法人名義の銀行口座を開設する作業は、この画面だけでは終わらず、自分で対応することになります。
加えて、役員報酬の金額をいくらにするか、決算月をいつにするか、インボイス登録をするかどうかといった判断は、ツールが代わりに決めてくれるものではありません。社会保険についても、日本年金機構の適用事業所には法人の事業所が含まれますが、被保険者になるのは役員報酬を受け取っている場合であり、無報酬の代表者は対象外です(厚生労働省の通知「法人の代表者又は業務執行者の被保険者資格について」による)。役員報酬額を決めた時点で、自分で年金事務所へ加入手続きを行う必要があります。
これらは会社設立の書類作成そのものとは別の、設立後に発生する経営判断です。マネーフォワードで書類作成の範囲を効率化できても、税務・社会保険・決算・役員報酬という経営判断まで自動で済ませてくれるわけではないという点は、デメリットというよりツールの守備範囲の限界として理解しておくと、この先の計画を立てやすくなります。判断に迷う場合は、税理士など専門家に一部を相談する選択肢もあります。会社設立という一つの手続きの中でも、書類を作る部分と、その後の経営判断を担う部分とでは、求められる専門性がまったく異なります。書類作成の効率化と、経営判断の相談先の確保は、別々に用意しておく必要がある準備だと考えておくと、設立後に慌てる場面を減らせます。


まとめ:デメリットを踏まえてどう向き合うか
ここまで見てきたデメリット・限界を整理すると、対応する会社形態・進め方が限られている点、入力を終えても公証役場・法務局へ自分で足を運ぶ工程が残る点、登録免許税(資本金額の0.7%、15万円が下限)や定款認証の手数料(条件により4段階)・電子定款にかかる5,000円が自分の負担になり得る点、役員報酬や決算、社会保険、税務といった設立後の経営判断はツールの外にある点の4つに集約されます。いずれも根拠のない主観的な評価ではなく、公式FAQ・公式ページで確認できる条件です。
これらのデメリットは、株式会社を標準的な形で発起設立し、対応外の条件に当てはまらない人にとっては、大きな支障にならない場合がほとんどです。一方で、取締役会を設置したい、海外居住者が役員に入る、窓口へ足を運ぶ余裕がないといった事情がある人は、事前にこの記事の内容と自分の状況を照らし合わせておくと、途中で手が止まる場面を減らせます。設立後の税務や社会保険、決算、役員報酬まで自分だけで抱えるのが不安な場合は、税理士など専門家に一部を任せる選択肢も含めて検討してみてください。




