この記事は、株式会社の作り方を調べていて、どこまでが自分の仕事で、どこから先が別の誰かの仕事なのか、境目がつかめずに手が止まってしまった人に向けて書いています。会社設立の解説記事の多くは、検討から登記までを時系列で並べるか、画面を一つずつ操作する順番で説明するかのどちらかです。この記事ではその2つの切り口からいったん離れ、「誰が担当するか」という役割の軸で株式会社の作り方を整理します。発起人である自分が決めて動くこと、マネーフォワード クラウド会社設立の画面が用意してくれること、提携の行政書士が代わりに担うこと、公証役場でしか完結しないこと、法務局でしか完結しないこと、専門家に頼むと楽になることの6つに分けて、会社設立という言葉のどこまでを自分で進められるのか見分けられるようにします。
株式会社の作り方を「誰が担当するか」で6つに分けて考える
株式会社を自分で作ろうとして調べ始めると、会社設立という一つの言葉の中に、実は性格の異なる複数の作業が混ざっていることに気づきます。書類の下ごしらえをする作業、法律上の効力を発生させる作業、窓口へ実際に足を運ぶ作業は、担当が別々です。この記事では時系列ではなく「誰が担当するか」という軸で6つに分け、自分・マネーフォワードの画面・提携の行政書士・公証役場・法務局・専門家という担当ごとに見ていきます。
結論を先に言うと、会社設立の書類を自分で作る部分はマネーフォワード クラウド会社設立でかなりの範囲を効率化できますが、定款認証という法律行為は公証役場でしか完結せず、登記の受理という行為も法務局でしか完結しません。ここを取り違えると、マネーフォワードが全部代わりにやってくれると期待して手が止まる、逆に自分で足を運ぶ必要のない工程まで身構えてしまう、という2種類のつまずきが起こります。
次のセクションから、担当ごとの持ち場を一つずつ具体的に見ていきます。最初に確認するのは、他の誰にも代われない、発起人である自分自身の持ち場です。会社設立という言葉は、書類作成・定款認証・登記・届出という4つの行為をまとめて指すことが多く、この記事ではその4つを担当ごとに切り分けて説明します。


自分(発起人)がやること|意思決定・入力・押印・窓口への持参
株式会社の作り方の出発点にあるのは、発起人である自分にしかできない意思決定です。会社法第25条2項により、発起人は設立時発行株式を1株以上引き受ければよく、発起人が1名だけでも株式会社を設立できます。会社法第326条1項は「株式会社には、1人又は2人以上の取締役を置かなければならない」と定めており、取締役会を置かない機関設計を選べば、発起人と取締役を自分一人で兼ねることもできます。発起人が1名でも設立できる条件を満たすかどうかは、この2つの条文がそのまま根拠になります。
会社名・本店所在地・事業目的・資本金額・決算時期という基本情報を決めるのも自分の仕事です。マネーフォワード クラウド会社設立の「会社情報入力」画面はこの決定を入力する場所であって、何を選ぶかという判断そのものを代わりに出してくれるわけではありません。決めた内容を画面へ入力する作業自体は自分の手で行い、資本金額は登録免許税(資本金の額の1000分の7で計算し、15万円に満たない場合は15万円という下限がある税額)に直結するため、会社設立の費用の多くを自分の決定が左右します。決めた資本金額や事業目的は、後戻りしにくい決定として慎重に決める必要があります。
入力が終わったあとにも、自分にしかできない作業が残ります。発起人名義の口座へ資本金を払い込む送金、認証済みの定款や登記書類への実印の押印、そして印刷した書類一式を法務局の窓口へ持参または郵送する作業です。会社設立を自分で進めるとは、突き詰めればこの「決める」「入力する」「押す」「持って行く」という4つの動作を自分自身が担うことを指します。

マネーフォワードの画面がやってくれること|書類のひな形生成と入力補助
自分の持ち場の次に見ておきたいのが、マネーフォワード クラウド会社設立の画面が代わりに担ってくれる部分です。「会社情報入力」画面に会社名・本店所在地・代表者・事業目的・資本金額・決算時期を入力すると、その内容がそのまま定款のひな形に反映される仕組みになっています。条文を自分で一から書き起こす必要が無い点は、書類作成の負担を大きく下げてくれる部分です。この自動生成の範囲は、会社設立という長い工程の中でも入口にあたる書類づくりに限られます。
定款まわりの選択が終わり出資金の払い込みが確認されると、「法務局へ登記書類の提出」という画面から、登記申請に必要な書類一式をまとめてダウンロードできます。登記完了後は「設立後の手続き」という画面が、これまでの入力内容をもとに税務署・年金事務所へ出す届出書類も自動で作ってくれます。画面ごとの入力項目とボタンの押し方を細かく追うと、ひとつの入力が複数の書類へ連動して反映されていく作りだと分かります。
ただしマネーフォワードが担うのはあくまで書類の下ごしらえまでで、公証役場での認証や法務局での受理という、法律上の効力を生じさせる行為そのものは代わりに行ってくれません。会社設立を自分で進める作業のうち、画面の中で完結する範囲と、画面の外に残る範囲を分けて考えることが、この後のセクションを読むうえでの前提になります。

提携の行政書士がやること|電子定款の作成代行と電子署名
「定款の作成方法の選択」画面で電子定款を選ぶと、そこから先の作業を担当するのはマネーフォワード自身ではなく、提携する行政書士です。電子署名を行うための環境を自分で用意しなくても、行政書士が定款を作成し、電子署名まで済ませて仕上げてくれます。この作成費用は通常5,000円(税込)ですが、マネーフォワード クラウドの有料プラン(ひとり法人プラン・スモールビジネスプラン・ビジネスプランのいずれか)を契約している場合は、この5,000円分をマネーフォワードが負担するため実質無料になります(更新日2025年10月23日、確認日2026年8月21日)。電子定款を選ぶかどうかは、会社設立の費用と日程の両方に影響する決定です。
行政書士が仕上げた電子定款は、「定款の受け取り」画面にメールで届き、目安は通常5営業日です。紙定款を選んだ場合はこの行政書士という担当自体が登場せず、収入印紙40,000円を負担したうえで、公証役場へ自分で書面を持ち込む流れに置き換わります。電子と紙のどちらを選ぶかで、この工程の担当が行政書士になるか自分になるかが入れ替わる点は、担当という切り口で会社設立を理解するうえでの分岐点です。
行政書士が担うのはあくまで定款という書類を仕上げるところまでで、次に見る定款認証という法律行為そのものは、行政書士の権限では完結しません。書類を整える担当と、法律上の効力を生じさせる担当は、ここではっきり分かれています。


公証役場でしか完結しないこと|定款認証という法律行為
行政書士がどれだけ丁寧に定款を仕上げても、その定款に法律上の効力を持たせる定款認証という行為は、公証役場でしか完結しません。日本公証人連合会によれば、令和6年12月1日から適用の手数料は、資本金額等が100万円未満で発起人全員が自然人など一定要件を満たす場合は1万5,000円、同じく100万円未満で要件を満たさない場合は3万円、100万円以上300万円未満は4万円、300万円以上は5万円という4段階です。資本金額と発起人の要件による4段階の手数料は、電子・紙のどちらの定款を選んでも同額で発生し、会社設立の費用のうち事前に見積もりやすい部類に入ります。
マネーフォワードの「定款の受け取り場所の選択」画面では、認証を依頼する公証役場を自分で指定しますが、認証そのものを行うかどうかを決める権限は公証人にあり、マネーフォワードにも提携の行政書士にもありません。電子定款であれば行政書士が申請の窓口になりますが、最終的に認証済みの定款としての効力を生じさせているのは公証役場の側だという点は変わりません。
認証を終えた定款は、出資金の払い込みという次の工程に自分の担当として戻ってきます。公証役場という担当が関わるのはこの定款認証という一点に限られ、この先の登記申請には関与しません。

法務局でしか完結しないこと|登記の受理と会社の成立
定款認証と出資金の払い込みが終わっても、株式会社としての成立を確定させる行為はまだ残っています。会社法第49条は「株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。」と定めており、株式会社という法人格は、法務局が設立登記を受理することで初めて生まれます。会社法第911条第1項により、設立時取締役等による調査が終了した日と発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内に、この登記をしなければなりません。期限を守らなかった場合、会社法第976条第1項第1号により100万円以下の過料の対象になり得ますが、これは行政上の制裁であり、期限を過ぎても申請自体ができなくなるわけではありません。この2週間という期限は、会社設立のスケジュールを立てるうえで欠かせない起点になります。
マネーフォワードの「法務局へ登記書類の提出」画面が作るのは書類一式までで、その先の提出方法は自分で選ぶことになります。窓口への持参・郵送のほか、法務省の登記・供託オンライン申請システム(申請用総合ソフト)を使えば、代表取締役本人がマイナンバーカードとICカードリーダライタを用いてオンラインで申請することもできます。会社の成立年月日として登記簿に記録されるのは、法務局が申請書を受け付けた日であり、登記完了予定日として法務局が公表する日はあくまで処理の見込みにすぎません。
設立の登記を受理し、その効力を確定させる権限は法務局にしかなく、マネーフォワードや行政書士がこの受理そのものを代行することはできません。次のセクションでは、この登記申請という工程を自分の代わりに担ってもらえる専門家について見ていきます。


専門家に頼むと楽になること|司法書士・税理士へ切り出す判断
ここまで見てきた6つの担当のうち、自分の負担を専門家に置き換えられる場面が2つあります。1つ目は登記申請そのものの代理です。司法書士法第3条第1項第1号は「登記又は供託に関する手続について代理すること」を司法書士の業務として定めており、司法書士法第73条第1項は、司法書士会に入会している司法書士または司法書士法人でない者はこの業務を行ってはならないと定めています。つまり、法務局への登記申請を自分以外の誰かに代理してもらう場合、その代理は司法書士の領域であり、電子定款を作った提携の行政書士がそのまま登記申請まで代理するわけではありません。
2つ目は設立後の税務です。税理士法第2条は税務代理・税務書類の作成・税務相談を税理士の業務として定め、税理士法第52条はこの業務を税理士でない者が行うことを禁じています。ただし会社が自社自身の申告書を自分で作成する行為は、他人の求めに応じて業として行うものではないため、この制限の対象にはなりません。決算や申告のスケジュール管理に不安がある場合、税理士への依頼を検討する余地があるという位置づけです。会社設立後に司法書士にも税理士にも頼まず、自分だけで最後まで進める人もいますが、それも選べる選択肢の一つです。
会社設立の書類作成という工程はマネーフォワードで自分で足りることが多い一方、登記申請の代理は司法書士、設立後の税務は税理士というように、専門家へ切り出せる場面は工程ごとに別々です。まとめて誰か一人に丸投げできる話ではなく、切り出す工程を自分で選ぶという判断が必要になります。

まとめ|役割表で株式会社の作り方を振り返る
株式会社の作り方を「誰が担当するか」で振り返ると、自分にしかできないこと、マネーフォワード クラウド会社設立の画面が引き受けてくれること、提携の行政書士だけが担うこと、公証役場でしか完結しないこと、法務局でしか完結しないこと、そして司法書士や税理士に置き換えられることが、それぞれはっきり分かれていました。会社設立という一つの言葉でくくらず、この6つの担当に分けて考えると、次に自分が動くべき工程が見えやすくなります。
マネーフォワードを使って会社設立の書類作成を自分で進める場合、画面の中で完結するのは書類のひな形作成と入力補助までであり、定款認証と登記の受理という法律上の効力を生じさせる行為は、公証役場と法務局という担当の外に出すことができません。この線引きを最初に押さえておけば、途中でどこまで進んだのか分からなくなる場面は減らせます。
登記申請の代理を司法書士に、設立後の税務を税理士に、それぞれ切り出すかどうかは任意の判断です。自分で最後まで担当する範囲を決めたうえで、残りをどの専門家に置き換えるかを一つずつ選んでいくことが、会社設立を自分のペースで進める実務的な進め方です。会社設立の書類作成はツールで足り、差がつくのは設立後の税務・社会保険・決算・役員報酬という工程だという整理は、この役割分担がそのまま裏付けています。




