この記事は、株式会社の作り方をマネーフォワード クラウド会社設立で調べていて、ある工程が「誰の仕事なのか」を勘違いしたまま進めてしまい、あとになって手が止まった経験がある人、またはこれから会社設立を自分で進めようとしている人に向けて書いています。会社設立という工程では、書類を整える担当・法律上の効力を生じさせる担当・窓口に足を運ぶ担当がそれぞれ別々に存在しますが、この境目は公式サイトの説明を読んだだけでは意外と伝わりにくい部分です。ここでは、株式会社の作り方でよくある「誰がやってくれるか」の勘違いを6つ取り上げ、実際には誰の担当なのかを一つずつ確認していきます。
株式会社の作り方でつまずく人の多くは「誰の仕事か」を取り違えている
株式会社の作り方を検索すると、マネーフォワード クラウド会社設立の画面を開けば会社設立がひとまとまりのオンライン手続きとして完結するように見えることがあります。実際には、画面の中で完結する部分と、公証役場や法務局という画面の外に出ないと終わらない部分が混在しており、この境目を勘違いしたまま進めると、想定していたタイミングで作業が止まってしまいます。
この記事で扱う6つの勘違いは、実際に会社設立の相談でよく挙がる場面をもとに整理したものです。マネーフォワードの役割・提携する行政書士の役割・公証役場と法務局の役割・専門家に置き換えられる範囲を、それぞれ勘違いしやすいポイントごとに見ていきます。1つの勘違いに気づかないまま次の工程へ進むと、費用の見積もりが甘くなったり、窓口へ持って行くべき書類が足りなかったりと、あとから手戻りが生じやすくなります。
最初に取り上げるのは、もっとも起こりやすい勘違いである、マネーフォワードがどこまで代行してくれるのかという範囲についてです。会社設立という言葉をひとまとめに使ってしまうと、こうした担当の違いはかえって見えにくくなります。


勘違い1|マネーフォワードが登記の受理まですべて代行してくれると思ってしまう
マネーフォワード クラウド会社設立の「会社情報入力」画面から作業を始めると、この先の登記まで画面の中だけで完結すると考えてしまう人がいます。実際にマネーフォワードが担うのは、入力内容から定款や登記申請書一式のひな形を作るところまでで、「法務局へ登記書類の提出」画面でダウンロードした書類は、印刷して自分で窓口へ持参または郵送する運用が基本です。
法務局のオンライン申請の案内によれば、代表取締役本人がマイナンバーカードとICカードリーダライタを用いて、法務省の登記・供託オンライン申請システム(申請用総合ソフト)から設立登記を申請することもできますが、これはマネーフォワードの機能ではなく、法務局側が別途用意している仕組みです。取締役会を置かない会社と置く会社とでは登記申請に添付する書類の組み合わせも異なり、取締役会設置会社の発起設立で必要になる添付書面には、就任承諾書や設立時代表取締役の印鑑証明書なども含まれます。法務局の案内によれば、設立登記の申請先は会社の本店所在地を管轄する法務局に限られ、窓口へ持参する場合も郵送する場合も、管轄を誤ると受け付けてもらえません。
マネーフォワードの画面をどれだけ丁寧に埋めても、窓口へ実際に書類を届ける動きだけは自分の担当として残ります。会社設立を自分で進める人ほど、この「書類ができる」ことと「登記が受理される」ことの間にある一手間を、あらかじめ工程として見込んでおく必要があります。マネーフォワードでの会社設立の作業がひと区切りついた時点は、まだ会社設立そのものの完了ではないと考えておくと予定が立てやすくなります。

勘違い2|電子定款は自分の操作だけで完成すると思ってしまう
「定款の作成方法の選択」画面で電子定款のトグルを切り替えると、あとは自分の操作だけで電子署名まで終わると思ってしまいがちですが、実際にこの先を担当するのは提携する行政書士です。行政書士が定款を作成し、電子署名まで済ませたうえで、「定款の受け取り」画面にメールで届くまでの目安は通常5営業日とされています。電子定款と紙定款とで異なる費用の内訳を見ると、電子定款の作成費用は通常5,000円(税込、マネーフォワード クラウドの有料プラン契約時は実質無料)である一方、紙定款は収入印紙40,000円が別途必要という違いがあります。
ここで見落としやすいのは、電子署名という作業自体を自分のパソコンで完結させているわけではないという点です。自分が担うのは「電子定款を選ぶ」という選択と、作成費用の振込までであり、署名という行為そのものは行政書士側の作業として進みます。紙定款を選んだ場合はこの行政書士という担当が登場せず、公証役場へ自分で書面を持ち込む役割に置き換わります。
電子定款を選ぶかどうかは、単なる好みの問題ではなく、収入印紙40,000円という費用の有無と、行政書士という担当が入るかどうかの両方を左右する選択です。この選択ひとつで会社設立にかかる費用の総額も変わるため、金額だけを見て決めるのではなく、担当が誰になるかもあわせて確認しておくと判断しやすくなります。


勘違い3|行政書士に頼めば登記まで一括で終えてもらえると思ってしまう
電子定款の作成を行政書士に任せたことから、そのまま登記の申請まで一括で代理してもらえると考えてしまう人がいますが、これは業務範囲の勘違いです。司法書士法第3条第1項第1号は「登記又は供託に関する手続について代理すること」を司法書士の業務として定めており、司法書士法第73条第1項は、司法書士会に入会している司法書士または司法書士法人でない者はこの業務を行ってはならないと定めています。
つまり、法務局への登記申請そのものを自分以外の誰かに代理してもらいたい場合、その代理を担うのは司法書士であり、定款まわりを担当した行政書士がそのまま登記申請まで引き継ぐわけではありません。行政書士と司法書士は名前が似ていますが、法律上担当できる業務の範囲が別に定められている、異なる専門家です。
登記申請は自分で法務局へ持参・郵送する方法のほか、司法書士に依頼して代理してもらう方法もありますが、いずれを選ぶにしても、電子定款の作成を頼んだ行政書士とは別の専門家を探す必要があります。この業務範囲の違いを知らずにいると、依頼先を探す段階で二度手間になります。なお、発起人自身が登記申請書を作成して自分の名前で法務局へ提出する本人申請であれば、司法書士に依頼しなくても会社設立の登記を進められます。会社設立を専門家に任せたいと考える場合は、定款まわりと登記まわりで担当が分かれているという前提から探し始めると、依頼先選びに迷いにくくなります。

勘違い4|定款認証の費用はマネーフォワードへの振込だけで終わると思ってしまう
「定款作成費用のお支払い」画面でマネーフォワードへ電子定款の作成費用を振り込むと、定款まわりの支払いはこれで終わりだと考えてしまいがちですが、認証手数料は別枠で発生します。日本公証人連合会によれば、令和6年12月1日から適用の認証手数料は、資本金額等が100万円未満で発起人全員が自然人など一定要件を満たす場合は1万5,000円、要件を満たさない場合は3万円、100万円以上300万円未満は4万円、300万円以上は5万円という4段階です。この手数料は、マネーフォワードの画面上での振込とは別に、公証役場側で自分が直接負担する扱いです。
なお、この定款認証という工程自体が発生しないケースもあります。合同会社の場合、公証人による定款認証の手続きは必要とされておらず、株式会社に特有の費用です。マネーフォワードで合同会社を設立する場合の違いを知っておくと、この認証手数料の有無が会社形態によって変わる理由も見えてきます。この記事はあくまで株式会社を前提に扱っており、合同会社の手続き自体には深入りしません。
マネーフォワードへの振込は電子定款の作成費用の分だけであり、認証手数料という別枠の費用が公証役場側に控えていることを、資金計画の段階で見込んでおく必要があります。会社設立の費用を見積もるときは、マネーフォワードへの振込分と公証役場での支払い分を分けて把握しておくと、想定外の不足に気づきやすくなります。

勘違い5|登記が終われば自分がやることはもう無いと思ってしまう
法務局で登記が受理されると、会社設立の作業そのものはそこで完結したように感じてしまいますが、実際には自分の作業がまだ残っています。登記完了後、マネーフォワードの「設立後の手続き」画面は、これまでの入力内容をもとに税務署・年金事務所・都道府県税事務所へ出す届出書類をまとめて作ってくれますが、窓口へ持って行く作業や、法人口座を開く作業は画面の外で自分が動く工程です。
国税庁の案内によれば、法人設立届出書は設立の日以後2か月以内、給与支払事務所等の開設届出書は開設の事実があった日から1か月以内が提出期限とされています。税理士への依頼を検討する場面としてよく挙がるのは、まさにこの登記完了後の決算・申告のスケジュール管理であり、設立書類の作成そのものを税理士に置き換える話ではありません。法人口座の開設でも、登記事項証明書や実印など金融機関ごとに求められる書類をそろえて窓口やオンラインで申し込む動きは自分の担当として残ります。
登記の受理という区切りは会社が法律上成立した瞬間ではありますが、税務署・年金事務所・金融機関という3つの窓口への対応は、成立後もしばらく自分の担当として続きます。マネーフォワードで会社設立の登記まで終えた人ほど、この先の届出も同じ画面の続きだと思い込みやすい場面ですが、「設立後の手続き」画面が作るのは書類までで、法人設立届出書の設立の日以後2か月以内という期限を守って窓口へ出す動きは、登記後もあらためて自分の担当として戻ってきます。

国税庁:法人設立届出書(国税庁)を参照。
勘違い6|資本金の払込みや実印の押印も代行してもらえると思ってしまう
マネーフォワードの「出資金の入金」画面や「印鑑購入」画面を見て、資本金の払込みや実印の準備までシステム側が代行してくれると誤解する人もいますが、この2つはいずれも自分の手でしか完結しません。会社法第34条は、発起人は設立時発行株式の払込金額の全額を払い込まなければならないと定めており、「出資金の入金」画面はあくまで払込先の口座情報などを表示するだけで、実際にお金を動かすのは発起人自身の送金という行為です。
印鑑についても同様です。マネーフォワードで印鑑を購入できる仕組みはありますが、これは印鑑という物品を用意する手段の一つにすぎず、就任承諾書や登記書類に実印を押す行為そのものは、購入した後で自分が行う作業として残ります。柘(つげ)4,980円・黒水牛10,500円・チタン33,340円という価格差は印鑑という物の値段の違いであり、押印という行為の代行費用ではありません。
資本金の送金と実印の押印は、株式会社の作り方の中でも特に「自分でなければ意味がない」行為です。誰かに代わってもらったつもりでいても、通帳の名義や印影の主体は最終的に発起人自身にしかなり得ません。会社設立をどれだけツールで効率化しても、この2つの行為だけは自分の手を離れないと覚えておくと、後工程での慌てを減らせます。


まとめ|勘違いしやすい境目を先に知っておく
ここまで見てきた6つの勘違いは、どれもマネーフォワード クラウド会社設立が「便利すぎる」がゆえに起こりやすいものです。書類のひな形作成・入力補助という範囲で完成度が高いために、行政書士・公証役場・法務局・自分自身という他の担当の存在が見えにくくなってしまいます。会社設立を自分で進めるなら、この6つの境目を先に知っておくだけで、途中で手が止まる回数は減らせます。
会社設立の書類を自分で作る部分はマネーフォワードに任せてよい範囲ですが、定款認証・登記の受理・資本金の送金・実印の押印という行為は、いずれも画面の外にある別の担当者、あるいは自分自身にしか完結できません。この線引きを最初につかんでおけば、次に何をすべきかで迷う場面を減らせます。
登記申請の代理を司法書士に、設立後の税務を税理士に、それぞれ切り出すかどうかは任意の判断です。会社設立を自分で進める場合でも、ここで挙げた6つの勘違いを避けたうえで、どこまでを自分の手で担当するかを工程ごとに選んでいく進め方が実務的です。マネーフォワードという便利なツールがあっても、会社設立という工程そのものを丸ごと肩代わりしてくれる担当は存在しない、という前提から会社設立の計画を立て直してみてください。





