この記事は、会社設立にかかる費用を自分で調べていて、比較サイトごとに数字が微妙に違うことに戸惑っている人に向けて書いています。マネーフォワード クラウド会社設立を使って、自分で株式会社を設立しようとしている人ほど、目にした総額をそのまま自分の場合に当てはめてしまいがちです。この記事では、会社設立費用について自分で調べているときに陥りやすい6つの誤解を取り上げ、それぞれの正しい考え方を、法務局・日本公証人連合会などの一次情報とマネーフォワードが公開している費用のページの両方から確認します。
「一覧表の数字」を鵜呑みにする前に確認すること
会社設立を自分で調べ始めると、比較サイトやまとめ記事に総額17.2万円、登録免許税150,000円といった数字がいくつも出てきます。ただしこれらの数字は資本金額や発起人の人数、紙定款か電子定款かといった条件がそろって初めて成り立つ一例にすぎません(登録免許税は税率0.7%が基準、定款認証手数料は4段階です)。条件が変われば、同じ株式会社の設立でも金額は変わります。
会社設立を自分で進める場合と、マネーフォワード クラウド会社設立のようなツールを使う場合、専門家に依頼する場合とでは、同じ株式会社を設立するのでも支払う相手と金額の内訳がそれぞれ異なります。まず、代表的な誤解から順番に見ていきましょう。
総額を左右する一番大きな分岐点は、資本金額をいくらに設定するかという1点です。この金額が決まれば、登録免許税(0.7%が基準)と定款認証手数料(4段階)はどちらも自動的に計算できます。逆に言えば、この金額を決めないまま総額だけを知ろうとしても、正確な数字にはたどり着けません。


誤解1|17.2万円などの総額に、印鑑代まで全部含まれているという早合点
公式ページ「会社設立のご利用料金」には、クラウド会社設立を利用した場合の株式会社の設立費用合計として17.2万円という数字が掲載されています(マネーフォワード、確認日2026年8月21日)。この数字を見て、実印・銀行印・角印の購入費用までまとめて入っていると受け取ってしまう人が少なくありません。
実際には、この17.2万円は「印鑑等を除く」基本費用の目安だと本文に明記されています。印鑑を購入する場合は、材質に応じて4,980円から33,340円ほどが別途かかります。柘(つげ)がもっとも安く、黒水牛が中間、チタンがもっとも高額という価格帯です。マネーフォワードの印鑑購入画面では、この3つの印材から選んでその場で注文でき、代金は定款作成費用の支払いとまとめて振り込む案内になります。
登記事項証明書や印鑑証明書の発行手数料といった細かい実費も、この17.2万円には入っていません。会社設立にかかる資金を見積もるときは、この基本費用と印鑑代・各種証明書の発行手数料を、別枠として足し合わせておいてください。総費用を考えるときは、この基本費用と印鑑代を必ず別の項目として管理することが、思い込みを防ぐ第一歩です。この総額はいずれも2025年10月23日更新のマネーフォワードの料金ページに掲載されている値です。


誤解2|登録免許税はどんな資本金額でも必ず15万円だという思い込み
この税金をどの会社でも同じ金額だと思い込んでいる人は少なくありません。中小企業庁の案内では、税額は資本金の額の1000分の7(0.7%)で計算し、その金額が15万円を下回るときに限って一律15万円が適用されるという下限つきの仕組みだと説明されています(確認日2026年8月20日、根拠は登録免許税法別表第一)。
資本金300万円なら300万円×0.7%は21,000円ですが下限を下回るため、実際の納付額は15万円になります。資本金3,000万円なら3,000万円×0.7%は21万円となり、下限より高い金額になります。中小企業庁の案内でも、資本金額がおよそ2,142.9万円を超えると0.7%の計算額のほうが高くなると説明されています。登録免許税の納付は、登記申請書に収入印紙を貼る方法のほか、法務局の「登記・供託オンライン申請システム」を使った電子申請でオンライン納付する方法もあり、どちらの方法で会社設立の登記を進めても税額そのものは変わりません。
比較サイトの一覧表にある数字は、多くの会社が下限に収まる資本金額を想定した一例です。自分の会社の資本金がいくらかを先に確認してから、0.7%で計算した金額と15万円のどちらが大きいかを確かめる順番が、思い違いを避ける近道になります。


誤解3|定款認証手数料はいつも1.7万円で決まっていると考える誤り
日本公証人連合会の案内によれば、株式会社の定款認証にかかる手数料は一律ではなく、資本金額等に応じて1万5,000円・3万円・4万円・5万円という4段階に分かれています(確認日2026年8月20日)。比較表でよく見る1.7万円という数字は、このうちの一例にすぎません。
資本金額等が100万円未満で、発起人全員が自然人で3人以下・発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける・取締役会を置かない、という3要件をすべて満たせば1万5,000円(令和6年12月1日から適用)。要件を満たさなければ3万円、100万円から300万円の間なら4万円、それ以上は5万円です(いずれも令和4年1月1日から適用)。
自分の会社がどの段階に当てはまるかは資本金額と発起人の要件を照らし合わせないと分かりません。発起人が2人でも自然人でなければ要件から外れ、1万5,000円ではなく3万円の区分になる点にも注意してください。この4段階の金額は、公証人手数料令第35条第1号(令和6年政令353号による改正後)にもとづいており、経過措置として嘱託の時期によっては旧手数料が適用される場合もある点に留意してください。


見落とし4|ツールの契約料金と、法務局・公証役場へ払う法定費用の混同
マネーフォワード クラウド会社設立には、無料プランと3つの有料プランがあります。この契約料金と、0.7%・下限15万円の登録免許税や、4段階に分かれる定款認証手数料のような法定費用を、同じひとつの「費用」として一緒くたに考えてしまう誤解がよく見られます。
有料プランを契約しなくても、書類作成そのものに料金はかかりません。契約料金は、設立後の決算書類作成や給与計算といった経理機能を使うための利用料であり、法務局や公証役場に納める、0.7%が基準の登録免許税や4段階制の定款認証手数料とは別の財布から出ていくお金です。どちらか一方を見直しても、もう一方の金額が動くことはありません。マネーフォワード クラウド会社設立のStep1「会社情報入力」画面で資本金額を入力すると、この2つの目安が自動で表示されますが、これはあくまで参考の数字であり、実際に法務局・公証役場へ納付するのは利用者自身です。
自分で会社設立を進める人ほど、ツールの利用料と国や公証役場に払うお金を頭の中で分けて管理しておくと、あとで見積もりを見返したときに混乱しにくくなります。有料プランを契約するかどうかは、設立後の経理業務をどこまで自動化したいかで判断するものであり、法定費用の負担を減らす手段ではありません。この切り分けを最初にしておくだけで、総額の計算はぐっと楽になるはずです。

誤解5|紙定款で自分で設立した20.7万円を、電子定款にもそのまま当てはめる早合点
公式ページが示す「専門家に頼らず設立する場合」の総額20.7万円は、紙の定款を使い、4万円の収入印紙を貼ることを前提にした数字です。この内訳を電子定款で自分で作成する場合にもそのまま当てはまると考えるのは早合点です。マネーフォワード クラウド会社設立の「定款の作成方法の選択」画面では、電子定款と紙定款のどちらを使うかをその場で選べます。
電子定款であれば印紙代4万円はかかりませんが、その代わりに電子署名に対応したソフトやICカードリーダー、マイナンバーカード用の電子証明書といった準備が新たに必要になります。紙の定款のままにするか電子定款を自分で用意するか、あるいはマネーフォワードのようなツールに任せるかで、この20.7万円の中身は前提条件しだいで変わってきます。
自分で電子定款を作る手間と、ソフトやカードリーダーの準備費用を比べたうえで、紙の定款のまま進めるか電子化するかを判断すると、思わぬ出費の見落としを防げる分かれ目です。会社設立の準備を自分で進める人ほど、印紙代の有無だけに注目しがちですが、準備にかかる時間と手間も含めて比較したほうが、あとから後悔しにくくなります。


定款等記載例(Examples of Articles of Incorporation etc)(日本公証人連合会)を参照。
誤解6|専門家に依頼すれば追加費用は一律8万円で済むという決めつけ
マネーフォワードの料金ページには、司法書士や行政書士に依頼した場合の設立費用合計として24.7万円が目安として示されており、この内訳のうち設立手数料は8万円ほどが一例として計上されています(マネーフォワード、確認日2026年8月21日)。この8万円を、どの専門家に頼んでも共通の金額だと思い込んでしまう人がいます。
実際には8万円はあくまで一例で、依頼先の事務所や依頼する業務の範囲によって報酬は変わります。定款作成だけを頼むのか、登記申請の代理まで含めて頼むのかによっても金額は変動するため、複数の事務所へ見積もりを取って比較したほうが、実際の負担額に近い数字がつかめます。見積もりを比較するときは、4段階に分かれる定款認証手数料や、0.7%が目安の登録免許税といった法定費用と専門家報酬を別の行に分けて提示してもらうと、会社設立にかかる総額を把握しやすくなります。

合同会社を選ぶと定款認証手数料の分だけ浮くという考え方は正しいか
合同会社は定款認証そのものが不要なため、株式会社なら必要な定款認証手数料(1万5,000円から5万円の4段階)がかかりません。この点だけを見て、その分だけ安くなると単純に考える人がいますが登録免許税の下限額も株式会社15万円から合同会社6万円へ変わる点まで含めて比較する必要があります(税率0.7%はどちらの会社形態でも共通です)。
マネーフォワードの費用比較ページによれば、合同会社をクラウド会社設立で設立した場合の総額は6.5万円、自分で紙定款を使って手続きを終えた場合は10万円が目安として示されています(確認日2026年8月21日)。合同会社は取締役会や監査役といった機関設計の自由度が高い一方、対外的な信用力では株式会社が選ばれる場面も多いといわれています。会社設立の費用だけで会社形態を決めてしまうと、設立後に必要な意思決定の仕組みや対外的な印象まで見落としてしまいます。合同会社の設立手続きの詳細は、このサイトのカテゴリー「マネーフォワード 合同会社設立」で扱っています。

まとめ:総額は「自分の場合の資本金額」で計算し直す
ここまで見てきた6つの思い違いに共通するのは、一覧表や比較記事にある一つの数字を、自分のケースにまで当てはめてしまう点です。総額は資本金額・発起人の人数・電子定款か紙定款か・誰に依頼して進めるかという条件によって変わります。
自分で計算し直すときは、まず資本金の額を仮決めし、登録免許税(税率0.7%、15万円が下限)や定款認証手数料(1万5,000円から5万円の4段階)をそれぞれ求めることから始めてください。そのうえで、印紙代を4万円にするか0円にするか、クラウド会社設立というツールを使うかどうかを決めれば、自分にとっての総額が見えてきます。誰に依頼して進めるかも、費用だけでなく、書類作成や登記申請にかけられる時間と照らし合わせて判断してください。
設立後の税務・社会保険・決算といった、ツールだけでは完結しない工程まで見据えて準備したい人は、この記事の6つの思い違いを一つずつ確かめながら、設立総額を自分で見積もる次の一歩を踏み出してみてください。数字を鵜呑みにせず、自分の資本金額に当てはめ直すことが、この記事でいちばん伝えたいことです。



