この記事は、マネーフォワード クラウド会社設立を使って自分で会社設立の手続きを進めようとして、資本金の最低額をめぐる断片的な情報に振り回され、手が止まってしまった人に向けて書いています。「有限会社が無くなったから今は300万円が最低ライン」「合同会社ならもっと低い」といった思い込みは、条件を省いた説明をそのまま信じると生まれやすいものです。国税庁・法務局・国土交通省・厚生労働省などの一次情報にもとづいて、株式会社の最低資本金をめぐってよくある5つの誤解と、正しい分岐点を整理します。
最低資本金の誤解が生まれやすい3つの場面
資本金の最低額を調べていると、条件を省いた断片的な情報に行き当たることがあります。平成18年(2006年)5月1日に施行された会社法により、旧商法にあった最低資本金制度(株式会社1,000万円・有限会社300万円)は廃止されましたが、この制度がいつ、どのように変わったのかまで正確に理解している人は多くありません。
マネーフォワード クラウド会社設立の「会社情報入力」画面は、資本金額をどんな数字で入力しても先に進めますが、この画面自体は制度の歴史や誤解を正してはくれません。ツールが受け付けてくれることと、その理解が正しいかどうかは別の話です。
この記事では、最低資本金制度をめぐってよくある思い込みを、条件つきの正しい説明と照らし合わせながら整理します。自分で会社設立の準備に取り組む前に、この記事で誤解の芽を摘んでおくと、あとの工程で余計な手戻りを避けられます。この思い込みをそのまま抱えたまま会社設立の手続きを進めると、資本金額の入力段階で余計な迷いが生じます。マネーフォワード クラウド会社設立を使えば、定款や登記申請書一式のひな形は自動で作られますが、資本金額という数字そのものの是非は、会社設立を自分で進める利用者が判断する部分として残ります。この判断を誤ると、会社設立後に資本金額を修正する変更登記の手間が生じます。

誤解①|「有限会社が無くなったので、今は300万円が最低ライン」
「有限会社が廃止されて株式会社に一本化されたのだから、旧・有限会社の最低資本金だった300万円が、今の株式会社の最低ラインになったはずだ」という誤解を見かけることがあります。しかし現行の会社法には、株式会社にも合同会社にも、資本金額の下限を定める規定そのものがありません(デジタル庁 e-Gov法令検索、2026年8月21日確認)。
平成18年(2006年)5月1日の会社法施行によって、有限会社という会社形態は新設できなくなり、それまであった有限会社は「特例有限会社」として存続する扱いになりましたが、この変更と資本金の下限額は別の制度です。300万円という数字がそのままスライドしたわけではありません。
実務上は、資本金額を100万円や300万円程度に設定する例も見られますが、これは制度上の下限とは無関係に、運転資金や信用力を踏まえた任意の判断です(中小企業基盤整備機構「J-Net21」、2026年8月21日確認)。旧・有限会社の300万円という数字と、実務上よく使われる300万円という金額が近いことも、この誤解を後押ししている一因と考えられます。会社設立を自分で進める人ほど、この「昔の基準がそのまま残っている」という思い込みに気づきにくくなります。
現行制度で株式会社を設立する場合、資本金額は1円からでも会社法上は問題ありません。この点は、次に扱う「制度の廃止は最近の話」という誤解ともあわせて、この記事で順番に確認していきます。

誤解②|「最低資本金制度の廃止は最近の法改正の話」
最低資本金制度の廃止を、ここ数年の新しい法改正だと誤解している人もいます。実際にはこの制度は平成18年(2006年)5月1日の会社法施行によって廃止されたもので、2026年の時点で20年以上前の出来事です(中小企業基盤整備機構「J-Net21」、2026年8月21日確認)。
「最近廃止されたばかりの新しい制度だから、実務ではまだ1,000万円を用意するのが無難」という考え方を見かけることがありますが、この前提自体が誤りです。資本金額に下限が無いという扱いは、すでに長期間にわたって定着した現行のルールです。会社法という一つの法律に統合されてから、2026年で20年が経過しました。この間、資本金額の下限が無いという制度自体は一貫して変わっていません(デジタル庁 e-Gov法令検索、2026年8月21日確認)。
制度が変わった時期を正しく把握しておくと、「最近の特例」ではなく「確立した現行制度」として資本金額を検討できます。会社設立の手続きを自分で調べる中で、古い情報と新しい情報が混在したページに行き当たることも珍しくありません。ここからは、合同会社との違いをめぐる誤解を見ていきます。


建設業の許可とは(国土交通省)を参照。
誤解③|「合同会社なら株式会社よりさらに資本金の最低額が低い」
「合同会社は株式会社より小規模な会社形態だから、資本金の最低額も株式会社よりさらに低いはずだ」という誤解もあります。しかし会社法上、株式会社と合同会社のどちらにも資本金額の下限を定める規定はなく、どちらも1円から設立できる点は同じです。
両者の違いは資本金の下限ではなく、出資者の責任の範囲や機関設計、定款認証の要否といった別の制度にあります。合同会社は株式会社と異なり、定款を公証役場で認証してもらう必要がありません。定款認証手数料は資本金額等に応じた段階制になっていますが、この費用そのものが合同会社では発生しない点は、株式会社との大きな違いです。この記事は株式会社を軸に扱うため、合同会社の設立手続きの詳細には立ち入りません。
会社法第575条は、合同会社の社員が定款の作成後、その出資に係る払込み又は給付の全部を履行しなければならない旨を定めています。株式会社の会社法第34条と条文の位置は異なりますが、出資を履行する義務そのものは共通しており、この点でも資本金の下限が別扱いになっているわけではありません。会社設立をマネーフォワードで自分で進める場合も、株式会社を選ぶか合同会社を選ぶかは、この記事の対象外である会社形態そのものの判断です。
資本金額の下限という一点に関しては、株式会社と合同会社のあいだに制度上の差はありません。会社形態を選ぶ基準は、資本金の下限ではなく、責任の範囲や信用面など別の要素で考える必要があります。

誤解④|「資本金1円なら審査もなく何の問題もない」
「資本金の下限が無いのだから、1円にしておけば設立の審査で困ることは無い」という理解も、半分だけ正しく半分は誤りです。法務局の登記手続きにおいて、資本金額を理由に申請が却下されることはありません。この点自体は事実です。
一方で、資本金額は登記事項証明書(履歴事項全部証明書)に記載され、法務局で誰でも取得して確認できる公開情報になります。金融機関の融資審査や、取引先との新規契約の場面で、この金額を確認されることがあります(中小企業基盤整備機構「J-Net21」、2026年8月21日確認)。
「審査を通る」ことと「対外的な信用を得やすい」ことは別の基準です。1円という金額は登記の審査こそ通りますが、対外的な信用力という観点では不利に働く場面があります。会社設立をマネーフォワードで自分で進める場合、資本金額の入力そのものは数秒で終わりますが、その金額が対外的にどう見えるかを検証する作業には、もう少し時間をかける価値があります。マネーフォワードの入力画面も、この差までは教えてくれません。インボイスへの登録判断も、資本金額とは別に自分で検討が必要な項目です。会社設立を自分で進める人は、この登記事項証明書という公開情報の存在を、資本金額を決める前に知っておく必要があります。

建設業の許可とは(国土交通省)を参照。
誤解⑤|「許認可の資本要件は資本金の下限規定と同じ話」
「資本金の下限が無い」という会社法のルールと、「特定の事業を営むために必要な資本要件」は、別の法律・省令にもとづく別の制度です。この二つを同じ話だと誤解すると、許認可が必要な事業を始めるときに資金計画がずれます。会社設立を自分で進める人が、許認可の存在を後から知って慌てるケースは珍しくありません。
建設業許可では、請負契約を履行する財産的基礎として、自己資本の額が500万円以上であること、500万円以上の資金を調達する能力を有すること、または許可申請前5年間の継続営業実績のいずれかを満たす必要があります(国土交通省「建設業の許可とは」、2026年8月21日確認)。
労働者派遣事業の許可では、基準資産額が事業所数×2,000万円以上、自己名義の現金・預金の額が事業所数×1,500万円以上であることなどが求められます(厚生労働省「労働者派遣事業を適正に実施するために-許可・更新等手続マニュアル-」、2026年8月21日確認)。会社法上の下限が無いことと、これらの許認可の要件を満たすことは、まったく別の確認作業です。
介護事業や旅行業などにも、都道府県や国土交通省が定める独自の資力要件がある場合があります。増資により資本金額を引き上げる場合は、株主総会の特別決議と変更登記の手続きが必要です。この登記にかかる登録免許税は、増加した資本金の額の1000分の7(0.7%)で、税額が3万円に満たないときは3万円が下限になります(法務局、2026年8月21日確認)。
事業目的にこうした許認可が必要な業種を含める場合は、資本金額を会社法の下限ではなく、その許認可が求める水準に合わせて決める必要があります。マネーフォワードで会社設立の書類を自分で作れても、この許認可側の要件確認までは自動化されません。


建設業の許可とは(国土交通省)を参照。
マネーフォワードの入力画面は、この誤解をどこまで防いでくれるか
マネーフォワード クラウド会社設立の「会社情報入力」画面は、会社名・本店所在地・代表者・事業目的とあわせて資本金額を入力する画面です(株式会社マネーフォワード公式ヘルプ、2026年8月21日確認)。この画面には、金額の下限を制限する仕組みはありません。
つまりこの画面は、ここまで見てきた5つの誤解のどれも、入力の時点で正してはくれません。1円と入力しても、300万円と入力しても、1,000万円と入力しても、画面はそのまま次のステップに進みます。判断そのものは利用者の役割として残ります。自分で会社設立を進める人が最後に立ち止まるのは、たいていこの資本金額の妥当性という一点です。
STEP1のサポートガイドでは、「発起人情報」欄や「電子定款を選択」のトグルなど、この画面周辺の入力項目についても解説されています(株式会社マネーフォワード公式ヘルプ、2026年8月21日確認)。この画面に入る前に、資本金額の水準を自分で決めておくと手続きがスムーズです。会社設立をマネーフォワードで自分で進める人にとって、この画面の外側にある判断は、書類作成そのものより時間がかかることもあります。
迷う場合は、税理士など専門家に事業計画を示して相談する方法もあります。登録免許税は資本金の額の1000分の7で、15万円に満たない場合は15万円が下限になるため、この計算方法を踏まえて資本金額を決めると、あとの費用の見通しが立てやすくなります。

まとめ|制度の変遷と実務の慣行を分けて理解する
ここまで見てきた5つの誤解に共通するのは、「昔の制度」「他の会社形態」「別の許認可」を、資本金の下限という一つの話に混同してしまう点です。会社設立をマネーフォワードで自分で進める人にとって、この5つの誤解を解くことは、資本金額を決める前段階の準備です。平成18年(2006年)5月1日の会社法施行で最低資本金制度が廃止されて以来、株式会社にも合同会社にも、資本金額の下限を定める規定はありません。
一方で、資本金額は登記事項証明書として公開され、建設業許可の自己資本500万円、労働者派遣事業の基準資産額2,000万円のように、事業内容によっては別の法律が独自の資本要件を定めている場合もあります。「下限が無い」という制度上の事実と、「実務上どう決めるか」という判断は、別々の軸として扱ってください。
マネーフォワードの「会社情報入力」画面はどんな数字も受け付けますが、この記事で挙げた5つの誤解を正すのは利用者自身の役割です。自分で会社設立を進める人ほど、制度の歴史と実務の慣行を分けて理解したうえで、資本金額の決め方を、運転資金や信用力といった実務上の基準とあわせて固めてください。
この記事で挙げた自己資本500万円という建設業許可の基準、基準資産額2,000万円という労働者派遣事業の基準、資本金の額の1000分の7という登録免許税の税率は、いずれも2026年8月21日時点で一次情報を確認したものです。制度は変わり得るため、実際に手続きを進める際は、国土交通省・厚生労働省・法務局など所管省庁の公式ページで最新の数字を確認してください。




